第二次大戦の敗戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が断行した教育改革で、現在の道徳に当たる「修身」などが廃止されたことを、現在の問題の遠因だと指摘する声がある。明治大の斎藤孝教授は著書「大人のための道徳」(育鵬社刊)で、従来の道徳教育の貧困について「儒教に基づく道徳教育の喪失は、日本人の精神性を変えてしまいました」「日本人は『人としての生き方の柱』『精神の背骨』と呼べるものを失ってしまったように思います」と嘆く。
同書では、新渡戸稲造の「武士道」から「弱者、劣者、敗者に対する仁は、特に武士に適わしき徳として賞賛せられた」という言葉を引用している。確固とした道徳観を持たない子どもが他人をいじめ、そのまま大人になり、職場でパワハラやセクハラを引き起こす現代社会の構図がかいま見える。
国際間の大国と小国の関係を例に挙げるまでもなく、世界が弱肉強食を基本に動いていることは紛れもない現実だ。ただ個人でも社会でも、弱者へ救いの手を差し伸べられるかどうかが成熟度の証しになる。幼少期からの道徳教育の重要性が改めてクローズアップされていると言えるだろう。
調査では、小中学校の不登校が3125人で、前年比536人増となったことも判明した。いじめや暴力行為の増加を反映した数字かも知れないが、追い詰められた子どもたちのSОSを大人が見逃さないことが大事だ。