【視点】懸念される経済への打撃

政府が東京など1都3県に、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を発令する見通しになった。昨年4月以来の緊急事態宣言で、今回は全国が対象ではないものの、首都圏は日本経済の心臓部である。大勢の人たちが営業や移動の自粛を強いられることになり、経済への相当の打撃は覚悟しなくてはならないだろう。
この時期に宣言を再発令することで、果たして感染拡大は止まるのか。経済への手当てはどこまで可能なのか。国民の不安は大きい。
当初、政府の観光支援事業「GOTОトラベル」が感染拡大の主犯のように言われ、キャンペーンは一時停止を余儀なくされた。だが沖縄では「GOTО」停止前後で感染拡大状況は変わらず、離島の石垣市では、むしろキャンペーン停止後に感染者数が急増している。「GOTО」と感染拡大の因果関係は、かなり怪しいと言わざるを得ない。
結局、沖縄は「GOTО」停止による経済的打撃と、止まらない感染拡大の双方に直面することになった。
沖縄の感染経路を見ると、飲み会などの会食や、家庭内での濃厚接触による感染が目立っている。「第3波」と呼ばれる感染の急拡大は、大きな医療崩壊を招くことなく「第1波」「第2波」を乗り切った、という県民の警戒心低下が大きな要因ではないか。ウイルスの何らかの特性や、体調を崩しやすい冬場を迎えたことが影響している可能性もある。
緊急事態宣言が発令されても、政府ができるのは国民や事業者に対する移動や営業の自粛要請が限度だ。それ以上の措置を求めるなら、法改正で要請に強制力を持たせ、違反者に罰金を科し、ロックダウン(都市封鎖)のような強硬策に出るほかない。メディアや野党も含め、まさにそのような強権が必要だと主張する声もある。
共産党独裁の中国は、そのような手法でアジア各国のどの国よりも効果的に新型コロナを抑え込んだとアピールしている。日本でも今後、緊急事態宣言が乱発される事態になれば、社会のあり方が大きく変容しかねない。
「GOTО」にせよ緊急事態宣言の再発令にせよ、菅義偉政権では、世論に押される形で方針変更を迫られるケースが目立つ。衆院選を控えるタイミングで、世論に敏感にならざるを得ないことは理解するが、そもそも、政府に感染拡大の全責任を押し付けるだけでは問題は解決しない。
マスク着用、「3密」回避、手指消毒の徹底で、ある程度感染リスクを抑えられることが判明している。行政機関も大人数での会食をしないことや、体調不良の場合は積極的に検査機関に連絡するよう呼び掛けている。だが感染者がこうした要請を無視し、感染を広げている例が報告されているのが実情だ。国民や県民一人ひとりが、感染予防に向けた自己責任の重みをもっと自覚してほしい。
「営業自粛と補償はセット」とよく言われるが、そう簡単な話ではあるまい。営業自粛要請に応じた事業所すべてに補償すれば、財政が破綻するのは明らかだからだ。政府や都道府県が強制的に営業を中止させれば補償の対象にはなるだろうが、現行法のように単なる要請にとどまるなら、補償を当然視する風潮にも反省を求めていかなくてはならない。
感染拡大に歯止めが掛からない状況の中、医療崩壊の防止は至上命題だ。医療機関は重症者や、高齢者などの高リスク者保護に力点を置き、重症者以外の感染者は、自宅か宿泊施設での療養に専念させる体制整備も必要になる。
「アフターコロナ」の日本社会や沖縄はどうあるべきか。「第1波」「第2波」の際と同じような思考では、経済の崩壊も感染拡大も防げない。

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