1日午前、新元号「令和(れいわ)」が公表された。「令和」の意味や確認される限りで有史以来初となる国書を典拠とした意義、日本人にとって「元号」が持つ価値などについて、日本法制文化史が専門で皇室史に造詣の深い、京都産業大学名誉教授、モラロジー研究所教授の所功(ところ・いさお)氏(77)に、八重山日報社が尋ねた。
―新元号は「令和」
良い文字であり、良い出典。
非常に「読み易く、書き易い」ということに加え、漢字の意味も「令」は「よい、よろこばしい」、「和」は「やわらかに、なかよく」という意味を持つため、良い文字が選ばれていると思う。
出典について私共は、日本古典の中では『日本書紀』ぐらいは考えていたが、『万葉集』が選ばれた。日本人は和歌という「やまとうた」を古来より自然に詠んできた。それを初めて集大成したのが『万葉集』。
しかも、歌そのものではなく、立派な漢詩・漢文で書かれた梅の歌会の「序文」から採っていることも重要。
歌会が行われたのは天平2年(730年)。当時は日本人が中国の漢詩・漢文を十分にマスターしていた時代。典拠自体は中国の詩文集『文選』などにもあるが、それらを十分に消化、吸収して応用、活用している例としても良いと思う。
―有史以来初となる国書からの出典
元号とは「新時代への名付け文化」で、表意文字である漢字によって「国民の理想」を表明するもの。したがって漢籍でも国書でも、表意文字である漢字で書かれているという点に意味がある。
ただ、国際化する世界において日本が日本のアイデンティティを求めていく中で、1300年近く前から、しっかりとした良い歌集があり、良い歌があるということを再認識するという意味で、初めての国書というのは画期的な意味がある。
―年号制度について以前、「超国家級の無形文化財」という表現をしている。日本人にとってはそれほどの価値がある
自分の子どもに名前を付けるように、「時代にも良い名前を付けたい」という気持ちを多くの人が持っていたと思う。元号は自分たちと関係の深いものだという認識を持たれていたことは良いことだった。
―国民の皆さんに伝えたいことを
良い元号が決まったので、元号を十分に理解し、大いに活用してほしい。
数字だけ並べた西暦の持つ便利さと、表意文字である漢字によって希望や理想を表す元号の持つ文化。その両方を上手く使いこなしていくことが、これからの日本にとって非常に大事なこと。
それを周知するものとして、ぜひ多くの方々が西暦と共に元号を大事にしていただけたら、ありがたい。