年の瀬、レコードで〝第九〟 佐久川さん「音質温かい」

開演前、レコードに針を落とす佐久川さん=28日午後、市立図書館視聴覚室

 年末恒例の「第九」を歴史的名演奏で―。プロデュース海の第11回年の瀬レコードコンサートが28日、石垣市立図書館視聴覚室で開かれ、訪れた人たちがベートーベンの「交響曲第九番」をレコードで鑑賞した。CDやインターネットの音楽配信の時代になり、一般人がレコードを耳にする機会は少なくなっている。プロデュース海を主宰する佐久川広海さん(75)は「レコードの温かい音質を楽しんでほしい」と話した。

 プロデュース海のレコードコンサートでは、佐久川さん個人が所有するLPプレーヤー、アンプ、スピーカーを会場に持ち込み、訪れた人に聞いてもらう。参加者は数人から10数人程度と小規模だが、佐久川さんは「お客さんがいる限り、文化の灯を絶やしたくない」と意気軒高だ。
 この日の参加者も家族連れなどを含め10人ほど。レコードは、ドイツの大指揮者ウィルヘルム・フルトベングラー(1886年~1954年)とベルリン・フィルによる1942年のモノラル録音を使った。
 現在のデジタル録音のように広がりはないが、スピーカーからは気迫に満ちたオーケストラの響きが会場いっぱいにあふれた。
 楽章が終わると、佐久川さんがレコードをひっくり返したり、取り換えたりと、昔ながらのレコード鑑賞の場面が再現された。訪れた人たちは、繰り広げられる名演奏に静かに聞き入った。
 佐久川さんは過去に音楽喫茶を経営していたことがあり、個人的にも戦前の名演奏の数々に親しんできた。「最新録音を聴き慣れた耳には音質は良くないが、昭和の時代、芸術を鑑賞する『ぜいたくさ』を満たしてくれた音が懐かしい」。表情がいっそう柔和になった。
 ■レコードの復権
 時代の趨勢(すうせい)はCDから音楽配信へと移り変わりつつあり、現在はスマホなどでネット上の音楽を楽しむ若者が多い。一方で音楽ファンの間では、アナログらしい厚みのある音を求め、レコードに回帰する動きも見られる。クラシック音楽の最新録音のいくつかは、CDや音楽配信だけでなく、レコードでも発売されている。

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