その意味でも、伊舍堂隊の特攻は改めて見直されるべき重要な史実である。
だが、戦後長い間、沖縄戦を伝える上で、伊舍堂隊の特攻は不当に軽視または無視されてきた。沖縄戦の悲惨な被害体験に起因する軍隊アレルギーや、軍事力に反対するイデオロギーの影響がなかったとは言えない。特攻隊を軍国主義に洗脳された不幸な若者と見る誤解がはびこっていたことも大きかった。沖縄全体として、歴史を客観的に評価する意識に欠けていた部分があったことは率直に反省すべきだ。
特攻隊の尊い犠牲の上に、現在の平和と繁栄があることは歴然たる事実である。特攻に対する評価はさまざまだが、命懸けで祖国で守ろうとした若者たちの思いを無にしてはいけないことに異論はない。その意味で、2013年に「伊舍堂用久中佐と隊員の顕彰碑」が建立されたことの意義は大きい。
伊舍堂大尉の遺品は遺族が自宅に保管しているが、歴史的な資料として後世に残すべきものも少なくない。現在は適当な場所がないようだが、将来的に建設が計画されている新博物館・美術館などに専用の常設スペースがあれば、より多くの人たちに伊舎堂隊のことを知ってもらえるだろう。今後は、こうした課題にも取り組まなくてはならない。
顕彰碑建立期成会や関係者は建立以来毎年、慰霊祭を開催してきたが、75年の節目を機に一区切りをつけ、今後の慰霊は個々人の判断にゆだねるという。
顕彰碑の建立や維持管理に尽力してきた関係者に対し、改めて感謝の念を捧げたい。また80年、100年という次の節目に向け、沖縄戦の歴史を正しく語り伝えたい。