国立天文台が、電波望遠鏡を設置している全国4カ所のVERA観測局のうち、石垣島局を含む3局を6月に閉鎖する方針を固めたことが30日分かった。観測局関連の予算が前年度比で半減され、運用が継続できなくなったという。世界の観測所と連携し、天の川(銀河系)の立体地図を作成する大プロジェクトを進めていたが、中途で頓挫することになる。
観測局の閉鎖は国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が30日、ホームページで公表した。予算削減は26日付で通知があり、水沢局以外の入来、小笠原、石垣島の各局について「今後数カ月以内にアンテナ運用が停止する見込み」としている。4局での観測は現在の観測シーズンである6月中旬までで終了するという。
7月以降、海外の観測所との連携による共同観測は、日韓は現在の7局から4局に削減、東アジアは現在の最大11局から最大8局に削減して運用する。
同観測所は「昨年12月に突如大幅な予算削減の可能性が現執行部から観測所に提示された」としており、今後については「アンテナの共同運用パートナーや外部資金・寄付の獲得等により、今後も一台でも多くのアンテナの運用を続ける可能性について検討していく」としている。
石垣島局設置当時の責任者だった石垣島天文台前所長の宮地竹史さんは「目的が達成できないうちに閉鎖されるのは非常に辛く、もったいない。天文学関係者の中では存続を求める声がある」と、いちるの望みをつないだ。
石垣島局は2002年、他の3局は01年に完成し、観測活動を開始。当初は22年3月まで観測を継続する方針で、日韓や東アジアと連携して国際共同観測も進め、19年4月にはブラックホールの影の撮影成功にも貢献した。
石垣島局は口径20メートルの電波望遠鏡を備えており、高校生の観測体験や琉球大学生の実習を受け入れ、一般公開などを通じて天文学への関心喚起に努めてきた。