沖縄の新型コロナウイルス感染者数が17日、百人を超えた。政府の緊急事態宣言が全国に拡大される中、沖縄もウイルスが蔓延(まんえん)する大都市圏に劣らず深刻な状況となりつつある。手をこまねいていると、沖縄本島そのものが、八重山など離島にとってのクラスター(感染集団)になってしまうだろう。
沖縄での感染拡大に歯止めが掛からない状況を見るにつけ痛感するのは、玉城デニー知事が発信力を十分に生かせていない歯がゆさだ。
2月の感染者初確認以来、知事は県内の感染者が徐々に増加する中で、そのつど、県外への渡航自粛、県外からの来県自粛、不要不急の外出自粛、繁華街での接待を伴う飲食店への外出自粛などを呼び掛けてきた。
だが、結果として感染者の増加は止まらないどころか、感染拡大のペースは加速している。それぞれの自粛要請のタイミングが遅く、しかも小出しを繰り返しているため、県民へのインパクトが薄いのである。
県内での流行が本格化したのは、観光客などが県内にウイルスを持ち込む「移入例」がきっかけだった。しかし、その後の感染拡大は家庭内での二次感染などが主で、県民の防疫意識の低さ、気の緩みに大きな要因がある。引き締めを図るため、県民の心に響くリーダーの強烈な言葉が必要だ。
その意味でも、県が独自に「緊急事態宣言」を発する意義は大きかったはずだ。しかし県は、対策本部で宣言の検討すらしていなかった。
政府が緊急事態宣言を拡大する前日の15日、県幹部は独自の宣言について問われ「明確な基準は持ち合わせていない。専門家の意見を聞いた上で判断する」と述べた。
政府の緊急事態宣言は、新型コロナ特措法に基づく。だが、地域が独自に発する宣言について確かに基準はない。だからこそ政治家が自らの責任と権限で決断するのであり、玉城知事は、職員に「専門家に相談して判断」などと言わせている場合ではなかったであろう。この対応は残念だった。