【視点】民意汲んだ「1人10万円」給付

 マスク不足への対処や、感染を防ぐために自宅にとどまるようにというメッセージを出す目的は間違っていない。ただ結果として空回りしているのは、前代未聞のコロナ危機にあって、何が国民の心に届く施策なのか判断する首相の政治的な直感力に陰りが生じているからだろう。民意を的確に把握し、迅速に政策に反映させる能力が政権内で低下しているのではないかと思わざるを得ない。
 そもそも、1月の春節前に中国人観光客を規制しなかった安倍政権の判断には、首相の支持者からも疑問の声が多かった。ボタンの掛け違えは、そのあたりから始まっていたのではないか。
 だが、一斉休校の呼び掛け、7都府県への緊急事態宣言、同宣言の全国への拡大などは、政権の決断として、それなりに評価されるものだ。
 補正予算案では、収入が半減した中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円給付する「持続化給付金」も合わせ、給付金として約15兆円を配る。
 児童手当の受給世帯への子ども1人当たり1万円給付なども含め、雇用維持と事業継続のために19兆4905億円を確保した。一人10万円給付のインパクトが大きいが、その他の政策にも注目すべきものはある。
 感染防止対策にせよ経済対策にせよ、政権が手探り状態であることは理解できる。ここは初心に戻り、国民のニーズに沿った政策を先手、先手で打ち出してほしい。

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