竹富島の特産品、養殖クルマエビの出荷のピークの時季を迎えているが、ユーグレナ竹富エビ養殖株式会社(新田長男代表取締役)によると、新型コロナウイルスの影響で航空便や定期船が大幅に減便され、先月22日からは県外市場向け出荷がほぼストップするという異常事態になっている。早朝に石垣島行きの船をチャーターするなど対策を始めているが、安定して空輸できる環境にはなっていない。
▽そもそも運べない
同養殖場では東京や大阪など全国の市場でのセリに間に合わせるために早朝の3時や4時ごろから水揚げ作業をしているが、県外直行便の運休を受けて出荷に大きな支障が出ている。同養殖場の笠井誠人場長によると「本来なら出荷量のピークは今だが、今年は五分の一くらいしか出荷できない」と話す。市場での取引値も、通常1キロあたり平均5000~6000円だが、今年は2000~3000円と暴落している。高級料亭など飲食店の需要が減ったことが主な要因。笠井場長は「これでは運賃が出ない。長引くほどエサ代もかさむ。そもそも運べないのでたたき売りさえできない」と深刻な現状を告白する。
▽大震災以上
このため養殖池のエビが出荷されないまま残り、来期の出荷に向けての準備ができないという課題もある。例年は5月から7月にかけて、養殖池の水を抜いて掃除する「池干し作業」をするが、今年はまだめどが立たない。このままだと影響が来年にまで及ぶ可能性もあり、最悪の場合、エビを廃棄しなければならないが「何としてもそれだけは避けたい。神戸や東北の震災やリーマンでも経験したことがない事態だ」と危機感を強める。
▽打開策
このような状況を改善しようと、特大サイズのエビを生きたままマイナス40度で急速冷凍し、ネット通販を始めた。全国の竹富島出身者やファンから「島の特産品を食べて応援しよう」とSNSなどを通じて拡散された。値引きしたこともあり、売れ行きも年末の贈答品を上回るなど好調で、新たな顧客も生まれつつあるという。また、船会社にも協力してもらい、6日から8日の早朝、石垣島まで出荷専用の船をチャーターして一部の県外市場へ出荷を再開した。ただ、その先の出荷は見通せず、今後も航空便の運航状況などをみながら、県外出荷の可能性を探る。笠井場長は「せっかく育ててきた沖縄県の産業の芽を潰してはいけない。当日水揚げした生鮮物が、全国のセリまでに届く配送システムを維持してほしい」と輸送体制の確立を訴えた。
(隅田賢通信員)