メディアでは、営業を自粛しない店舗などに嫌がらせする「自粛警察」と呼ばれる人たちが話題になった。
あれほど行き過ぎた行為ではなくても、過剰なほどに感染防止に気を使い、自分や親しい人たちを守ろうとした国民性が、危機の克服には確かに一役買った。志村けんさんのような著名人の死の衝撃も、国民の心理を引き締めたはずである。
沖縄も14日に独自の緊急事態宣言を解除し、21日には休業要請も解除する。5月に入って新規感染者は一人も確認されておらず、入院していた感染者も8割以上が退院し、医療機関の逼迫(ひっぱく)状態も緩和された。沖縄の状態が落ち着いたのは、海外や大都市圏からの観光客来県がほぼストップしたことが要因と思われる。
石垣市の場合、これまでに4人の感染者を出したが、病床が不足するような事態は何とか免れた。
竹富町の離島や与那国町は医療体制がさらに脆弱(ぜいじゃく)だが、現時点で感染者は出ていない。石垣市でPCR検査体制が整備され、今後、感染者が出た場合の早期対応が可能になったのも朗報だ。
全国と同様、沖縄本島、八重山も「第1波」は何とか乗り切ったと評価していいだろう。
だが、代償は観光産業の大打撃である。国、県、自治体とも経済活動を再開する中で、さまざまな経済対策に取り組む姿勢を示しているが、絶頂期のような沖縄観光の勢いを取り戻すには時間がかかる。
それだけでなく「〇〇万人突破」というフレーズに酔いしれ、観光客は多ければ多いほどよいと考えがちだった従来の沖縄観光の在り方も、再考する時期が来ているのかも知れない。
いずれにせよ、感染の再拡大を防ぐことが経済再生の大前提だ。そのためには、まだまだ行動の自粛を求められる局面は多いし、気の緩みを一気に表面化させることはできない。「勝利宣言」はまだ早い。