政府と県の対立が膠(こう)着状態に陥っている米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を打開するため、中谷元・元防衛相が移設後に建設される滑走路の「軍民共用」や、自衛隊と米軍の「共同使用」を提唱している。これに対し玉城デニー知事は、3日の中谷氏との会談で「無理だ」と一蹴。改めて辺野古移設の中止を求めた。辺野古沿岸では埋め立て工事が進むが、玉城知事は一切の妥協を拒否する強硬姿勢を崩しておらず、政府との対立が解消する見通しは立たない。
辺野古移設推進の立場ながら、建設費の高騰や工期の延長を懸念する中谷氏。軍民共用や自衛隊と米軍の共同使用によって、移設後の滑走路を日本側も活用可能な施設とし、県民の理解を得たい思惑があると見られる。
これに対し玉城知事は、完全拒否の姿勢で臨んだ。中谷氏が稲嶺県政時、辺野古の軍民共用案が浮上した経緯に言及し「(軍民共用を)私なりに追求したい」と述べると、知事は15年の使用期限案が2006年の閣議決定で否定されたことを指摘。「(現行計画で)沖縄が出し、政府が認めている条件は一つもない」と批判した。
軍民共用の現実性について「辺野古に固定翼機が使える空港は建設できない」として、民間機が利用する場合、滑走路を延長する必要があり、埋め立てが増えると述べた。
米軍と自衛隊の共同使用に関しても「県外の自衛隊基地のほうが時間も計画性も早い」と取り合わなかった。
中国の脅威に対する認識でも隔たりがあった。中谷氏は、中国の艦船が沖縄本島と宮古島間を往復している現状を示し「今後、ますます増える。沖縄、南西方面の防衛体制がさらに重要になる」と主張。辺野古移設で「地域の平和と安全にも貢献できる」と訴えた。
沖縄で陸海空3自衛隊の統合運用機能を持たせる構想も提示した。
これに対し玉城知事は「むやみに軍備増強を考えるのではなく、沖縄を平和の緩衝地帯として認めていただくことも必要」と平和外交による解決を訴え、自衛隊の強化に否定的な考えを示した。
4日のツイッターでは「『これまで多くの議論に時間を費やした。様々な方に関わって頂いた。仲井真(弘多)さんが承認した。北部の方は空港を望んでいる。辺野古は軍民共用と自衛隊も含めて活用できる。海兵隊は沖縄に必要。自衛隊のロングレンジミサイル部隊は必要』これが今日の意見交換での先様の主なご開陳。デジャビュ(既視感)感満載」と書き込み、辺野古移設に理解を求める政府や自民党を痛烈に批判した。