【視点】米軍感染拡大 危機管理疑わせる事態

 在沖米軍で新型コロナウイルスの感染が相次いでいる。東京都でも連日200人超の新規感染者が報告され「第2波」到来への懸念が強まる中、在沖米軍で感染が拡大することは、沖縄にまた一つ大きなリスクを背負わせることになる。日米両政府には厳重な感染防止措置を取ってほしい。
 県によると、在沖米軍の感染者数は今月に入り計98人に上った。感染者の所属先は普天間飛行場(宜野湾市)、キャンプ・ハンセン(金武町)、嘉手納基地(嘉手納飛行場)、キャンプ・マクトリアス(うるま市)に広がっており、6月以前の感染者も含め、在沖米軍全体で感染の規模がどの程度になっているのか明らかではない。
 県は、米軍関係者は米の独立記念日に当たる24日前後に、夜の繁華街やビーチでのパーティを楽しんでいた情報があるとしている。県民の基地従業員も多数いる。米軍から一般県民に感染が広がる可能性は否定できない。
 軍隊の感染状況は軍事機密にも関わるため、一律に公表されるわけではない。ただ数字だけ見れば、在沖米軍内でクラスター(感染者集団)が発生している可能性もある。
 政府や県の緊急事態宣言下、必死に耐え抜いてきた県民からすると「米軍は一体何をしているのか」という気持ちになる。防疫対策もまともにできない状況で、沖縄を取り巻く安全保障の危機に果たして対応できるのだろうか。米軍の危機管理能力そのものを疑わせる事態だ。
 玉城デニー知事は13日のツイッターで「日本政府が米軍に対して国民の命を守るためにとるべき協議や措置などを事務方任せにしているのではと憂慮しています。どれだけの数の外国からの人が、どこから国境を越えて日本へ入り、どのようにして、どこへ移動しているのか。まったく情報がないなんて異常としかいいようがありません」と日米両政府を批判した。
 知事が危ぐするように、世界最大の感染国となった米国から感染の可能性がある米兵が続々沖縄入りしているのだとしたら、由々しき問題だ。
 波紋は県内自治体にも広がっている。米軍は海外から人事異動で来県する関係者を隔離するため、北谷町で民間のホテルを借り上げた。これに町が反発し、県は町で飲食店などの従業員を対象にしたPCR検査を急きょ実施した。
 県議会は、感染を基地内隔離することや、感染者の行動履歴公表などを求める決議を全会一致で可決した。
 この問題は、沖縄が長年の米軍基地負担に苦しんでいる問題も絡むだけに、一筋縄ではいかない。県民も反基地感情と防疫対策は別物と割り切り、相手が米軍であるという理由だけで過剰反応したり、パニックを起こすようなことはないようにしたい。
 菅義偉官房長官は13日の記者会見で、感染者の行動履歴や濃厚接触者のフォローなど必要な情報提供は日米合同委員会の合意に基づき、米側から受けていると明らかにした。米軍からは感染者の増加に関し、所属する部隊全員に積極的なPCR検査を実施した結果という説明も受けているという。「例外的に在沖米軍について県が(情報を)公表することは妨げない」としている。
 今後の感染状況の推移や、日米両政府の対応を冷静に見極めた上で、沖縄として必要な感染拡大防止策を求めるべきだ。

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