23日からの4連休は観光業界には書き入れ時で、政府の観光支援事業「Go To トラベル」の誘客効果もあり、本来なら住民の期待が膨らむ時期になるはずだった。ところが首都圏で新型コロナウイルスの再拡大が鮮明になり、逆に住民の不安が高まる皮肉な状況になってしまった。感染者をなるべく島に入れない、万一感染者が出た場合でも絶対にウイルスを広げない。「安全安心」な観光地を目指す取り組みの真価が問われようとしている。
再確認しなくてはならないのは、水際対策の徹底、島に入った観光客の感染防止対策、島内で感染者が出た場合の早期隔離と濃厚接触者の早期特定だ。
新石垣空港では、石垣市が「旅行者健康相談所」を設置して市職員2人を常駐させ、発熱者全員に検査を求める独自の水際対策を実施している。
空港には発熱者を検査場所である県立八重山病院に搬送するための専用車両も置いてある。4連休までには県が旅行者専用相談センター(TACO)分室を設置して市の水際対策を引き継ぐ予定だ。
だが、体調不良の状態で旅行に行ったり、飛行機の機内で突然発熱する人がそう多いとは考えにくい。感染者が流入するのであれば、ほとんどはむしろ、無症状で水際対策をすり抜けるケースだろう。
市は宿泊施設と協定を結び、観光客の体調管理を徹底するとともに、チェックアウトから3日後に健康状態を問い合わせることも求めている。島を出て3日以内に発熱した場合、島内で他人に感染させた可能性があると見られるためだ。
観光客が増えれば宿泊施設側の負担も増えることになるが、市は励行を求める姿勢だ。このあたりは緩みがないようにしてほしいが、宿泊施設側の負担を軽減する工夫も必要かも知れない。感染疑いが出た場合、待機場所となる宿泊施設の負担を懸念する声もある。
観光客側の協力も必要だ。市民からは「観光客がマスクを着けずに出歩いている」という不安の声も上がっているようだ。
専門家によると、ウイルスは飛沫にも多く含まれており、マスク着用は周囲の人にウイルスをうつさないための重要な手段となる。
日本の「第1波」が他国ほど深刻化しなかった背景として、高いマスク着用率を指摘する声があるほどだ。
市も目抜き通りにのぼりを設置するなどとして周知を図っているが、観光客にはマスク着用の強い意識を持ってほしい。
八重山病院ではPCR検査と抗原検査が可能で、感染疑いが発見された時間帯などによって使い分けている。
「第1波」当時と違うのは、島で検査体制の整備が進んだことだ。今であれば、当時の経験や反省を踏まえた行動も可能になる。住民も必要以上に恐れず、観光客を笑顔で迎える心構えを持ちたい。
夏は沖縄が最も沖縄らしい季節であり、観光客には存分に島々の魅力を堪能して帰ってほしい。島に来るほうも迎えるほうも、感染防止に最新の注意を払い続けることが大事である。