【視点】「アフターコロナ」の観光確立を

 県は、県内の新型コロナウイルス感染状況が、4段階の警戒レベルのうち2段階目の「流行警戒期」に入っていると判断した。県内の新規感染者は28日も過去最多を更新し、初めて20人を突破した。県の専門家会議は「沖縄本島中南部で流行が始まっている」との認識を示しており「第2波」と呼ぶかどうかは別にして、大きな感染の波が沖縄に迫っていることは確かなようだ。
 玉城デニー知事は28日の記者会見で、現段階では来県自粛や、事業者への休業要請はしない方針を明らかにした。「第1波」の際に観光を中心とした経済活動が凍結状態になり、県経済に大きな被害が出たことが念頭にあるはずだ。
 23日からの4連休は、沖縄にとって緊張を強いられる日々だった。加えて「GO TО トラベル」にはメディアからの風当たりも強かったが、多くの観光関連業者は久々に息を吹き返す思いだったろう。
 石垣市に関しては新石垣空港で発熱が検知された到着客はなかったが、無症状の感染者がいた可能性までは否定できない。市は宿泊施設に観光客の体調管理を徹底するよう依頼したり、飲食店の感染防止対策を強化することなどを求めた。
 その成果が出たかどうかは今後判明する。だが「アフターコロナ」「ウィズコロナ」の新たな観光のあり方を予感させるような取り組みが展開できたのではないか。
 感染防止と経済活性化の両立には、どの国も苦慮している。だが少なくとも主要国は経済重視に舵を切り始めている。
 その姿勢が最も鮮明なブラジルは、感染者数が米国に次ぐ約220万人に達し、ボルソナロ大統領自身が感染する状況に陥ったが、大統領は強気の姿勢を崩していない。米トランプ政権も経済重視だ。日本は菅義偉官房長官が「現時点で緊急事態宣言を再び発出し、社会経済活動を全面的に縮小させる状況にはない」と述べた。安倍政権も経済重視に傾いていると見るべきだろう。
 感染防止と経済活性化を二者択一にしてしまうと、いずれにせよ破綻が待っている。「第1波」を踏まえ、感染防止策を推進しながら、経済を動かし続ける方法を模索するのが最も賢明だ。
 だが、感染拡大がさらに深刻化し、医療崩壊が起こるような事態になれば話は別だ。沖縄が来県、来島の受け入れを停止することも当然視野に入る。その判断をどこで線引きするかが政治に与えられた課題である。
 新型コロナの驚異的な感染力を見ると、社会で暮らす限り、どう頑張っても感染者ゼロを継続するのは至難の業だ。世界保健機関(WHО)のテドロス事務局長は「最終的に重要なのは感染者数ではなく、命を救うことだ」と指摘した。
 今後は、ある程度の感染者発生を見越しながら、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ人は絶対感染させない態勢を構築し、死者数を抑え込むことが最大の目標になりそうだ。
 沖縄の主要産業が観光であることは当分は変わらない。「アフターコロナ」の観光を確立することが生き残りの道だ。

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