【視点】本島―離島の移動にリスク

 県内の新型コロナウイルス新規感染者数は高止まりを続けており、石垣市でもじわじわと拡大傾向が続いている。過去2回の県の緊急事態宣言時を「第1波」「第2波」と呼ぶなら、これからの冬到来もあいまって「第3波」の可能性がいよいよ現実味を帯びてきたということだろう。
 石垣市では今月に入り、かりゆし病院の院内感染がクラスター(感染者集団)に発展するなど、同病院関係者の感染が急拡大した。だが同病院関係者の検査も一段落し、院内感染のあぶり出しがほぼ終了したところで、今度は同病院関係者以外で、沖縄本島渡航者などの感染者が増え始めた。
 県内の10万人当たり新規感染者数は1カ月近く全国ワーストの状況が続いている。県は26日、このままでは警戒レベルを最高の「感染蔓延(まんえん)期」に引き上げざるを得ないとして「沖縄コロナ警報」を発した。この時期、沖縄本島へ渡航したり、本島からの来訪者と接触する際は、くれぐれも感染予防に注意する必要があるということだ。
 県議会自民党会派の宮古、八重山視察団でクラスターが発生したことは、八重山住民にも大きな衝撃を与えた。石垣市の副部長や竹富町の副町長も濃厚接触者と判断され、県議団との面会から約2週間経過するまでは登庁できなくなってしまい、地元行政にも影響が出ている。この時期、本島と離島間の移動はリスクが伴うことを自覚しなくてはならない。
 中山義隆市長は27日「本島などに旅行に行く人は感染予防策を徹底し、戻ったあと1~2週間はしっかり体調管理をして、感染を最小限に食い止める協力をお願いしたい」と呼び掛けた。
 石垣市の医療体制も逼迫(ひっぱく)している。主に重症者を受け入れる県立八重山病院は23人が入院しており、感染症対応病床は最大29床まで増床する予定だが、このままのペースだと満床が近づく。
 かりゆし病院も入院中の感染者をそのまま受け入れているほか、徳洲会病院も受け入れの準備を進めている。無症状者、軽症者が入所する宿泊療養施設のホテルもある。だが感染者の治療や施設の運営に当たるスタッフ数には限りがあり、単純に病床数を増やして感染者を受け入れればいいという話ではない。
 何度も繰り返されていることだが、離島の医療体制は脆弱だ。感染者の増加は仕方がない面があるとして、増加のペースに歯止めを掛けなければ、医療崩壊のリスクが高まる。最悪の場合、重症者を沖縄本島の病院へ搬送するような事態に陥ってしまう。
 気を付けなくてはならないことは、現在は県民同士の会食や職場内、家庭内での感染が増えていることだ。新型コロナ発生初期のように、観光客などが県外からウイルスを持ち込む「移入例」が多かったころとは様相が異なる。
 県は、感染リスクが高まる「5つの場面」として①飲食を伴う懇親会②大人数や長時間におよぶ飲食③マスクなしでの会話④狭い空間での共同生活⑤仕事の休憩時間に休憩室や喫煙所へ移動する際など、居場所の切り替わり―を挙げている。
 「第3波」を阻止できるかどうか、県民自身の意識が問われている。

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