与那国町(外間守吉町長)は、沖縄セルラー電話㈱(湯淺英雄代表取締役社長)、テクノロジーを利用した医療サービスを提供する㈱メドレー(豊田剛一郎代表取締役医師)と協力し、全町民約1700人を対象にした国内初のオンライン診療実証実験を16日から開始する。町民と与那国町診療所(崎原永作所長)をインターネットで結び、町民はスマートフォンやタブレットで診療を受けることが可能になる。9日午後、外間町長らが那覇市で記者会見して発表した。
新型コロナウイルス感染の恐れから、島で唯一の医療機関である与那国町診療所では診療を控える島民の数が増加しているという。発熱外来の患者をオンラインで診療することで町民の感染の恐れをなくすとともに、離島の医療格差是正へ向けた試みだ。
外間町長は取材に対し「与那国では町民1700人に医師が1人しかない。コロナ禍の影響もあり、今後過酷な医療崩壊が起こる可能性がある。オンライン診療導入で医療従事者の負担を軽減する可能性を見出したい」と意気込んだ。
実証実験は16日から来年2月末までの実施で、その後本格的な運用が検討される。
㈱メドレーが提供する「CLINICS(クリニクス)」は、全国でシェア№1を獲得するオンライン診療アプリ。スマートフォンやタブレットで問診票の提出と診療予約が可能で、オンライン受診とクレジットカードでの支払い、処方薬の発行までを完結できる。
緊急時は町役場、消防、社会福祉協議会の担当者が自宅に駆け付け、端末と診療所を繋げて受診をサポートすることも可能という。
崎原所長は「コロナ禍の中、診療所の外にテントを設け一般外来と発熱外来を分けたが、住民の不安は取り除けていない。持病を持つ患者が安心して来院できる医療体制を構築したい」と期待した。
同アプリの活用支援と緊急時に使用する端末の提供は沖縄セルラー㈱が受け持つ。菅隆志代表取締役副社長によると、島でのスマートフォン保持率は50%弱。
島民の高齢化が進む中、アプリ操作やクレジットカード登録は困難だという懸念もある。脳神経外科勤務の経験を持つ豊田代表医師は、「入口のハードルは高いかもしれないが、成果が出れば与那国だけでなく離島地域全般の医療格差解決に繋げることができる」と前向きな姿勢を見せた。
実験にあたり、島では16日~18日の間、アプリ操作の体験会が与那国町観光協会で開催される。体験会に参加できない島民でも、希望があれば町職員が出向き操作の説明をするという。
実証実験は新型コロナ影響下の特別措置として、厚生労働省が初診からのオンライン診療を限定的に実施可能と発表したことが背景。沖縄セルラー㈱の呼び掛けで実現した。
同アプリは月額1万円のサービスだが、実施期間中は町の負担はない。