県立八重山病院(篠﨑裕子院長)は12日、新型コロナウイルス患者の対応で医療が逼迫(ひっぱく)しているため、今後、新型コロナ以外の重症患者が出た場合、沖縄本島に搬送する方針を明らかにした。同日から一部手術も延期し、新型コロナが通常医療にも影響を及ぼしている事態が浮き彫りになった。篠﨑院長らと共に記者会見した中山義隆市長は「この状況は『医療崩壊危機宣言』だ」と述べ、八重山の医療崩壊が差し迫っているとの認識を示した。
12日現在、八重山病院には新型コロナ患者15人、コロナ感染疑いの患者4人が入院。コロナ患者のうち重症者は3人で、うち1人がこの日、沖縄本島に自衛隊機で搬送された。中等症も2人いる。
県八重山合同庁舎で記者会見した上原真人医師は「病床も看護師も足りない。県コロナ対策本部と相談したが、コロナ以外の重症患者は、本島にヘリで搬送せざるを得ない」と説明した。
新型コロナ以外の重症者を沖縄本島に搬送することで、八重山病院はコロナ重症者の治療に注力できる。ただ沖縄本島の医療機関がさらに逼迫する可能性もあり、長期的に重症患者の搬送を続けられるかは未知数。
上原医師は、八重山病院の危機的な状況が市民に伝わっていないとして「市民と医療従事者との温度差があまりにも大きい。この状況だと、きょう、あすにでも(救命する患者を選別する)『命の選択』をしなくてはならなくなる」と訴えた。
新型コロナの入院患者数は感染症対応病床数を超えているため、病院側は病床を増やし、他の病棟から一時的に看護師を配置して対応している。このためコロナ以外の通常医療が手薄になり、予定されていた手術について順次、延期の検討を始めた。13日は3件の手術を延期することが決まったという。
中山市長は「このまま感染者が増加すると、医療崩壊が引き起こされる」と懸念。市民に改めて不要不急の外出自粛などを求めた。