沖縄の新規感染者数が4日、初めて600人を超えた。感染拡大は深刻化の一途をたどるが、「切り札」とされるワクチン接種は進まず、県には手詰まり感が漂う。4日の記者会見で玉城デニー知事は「一人ひとりが家庭、企業で感染防止対策の徹底を図るしかない」と述べ、県民の「自己防衛」を訴えるほかなかった。
▽デルタ株猛威
県疫学統計・解析委員会の高山義浩医師は、今後1週間の感染者数を4500人~6000人と推定する試算を報告。1日当たり新規感染者数に換算すると最大800人台となり、国内でも類例のない流行規模に達する可能性がある。
最大の要因は、インドで悲惨な医療崩壊を引き起こした「デルタ株」まん延。「すれ違っただけで感染する」ほどの強い感染力があるとされ、感染源の特定が困難なため、広範囲の市中感染に発展しやすい。玉城知事は「外出すれば、どこでも感染のリスクがある」と指摘する。
高山氏は「ワクチン接種率が上がれば陽性者が減るという相関関係が示されている」とワクチン効果に期待する。だが沖縄の全人口に対する1回目接種率は1日現在、28・3%(全国平均34・47%)にとどまり、依然、全国平均より低い。「デルタ株」拡大のスピードに接種が追いつかない現状だ。
玉城知事は今後予想される感染拡大について「経済や医療体制に深刻な影響を与えることが考えられる」「来週以降、かなり病院の逼迫(ひっぱく)が予想される」と危機的な現状に繰り返し触れ、県民の「行動変容」を促した。
だが3日前の1日にも、経済界などと合同で2週間の外出自粛をはじめとしたメッセージを発表したばかり。4日の会見では、手指消毒、マスク着用、部屋の換気、会食自粛など、これまで何度も繰り返してきた要請に再度言及することを余儀なくされた。
▽ロックダウン不可
1日のメッセージで玉城知事は、沖縄の現状を「ロックダウン(都市封鎖)相当」と表現。しかし4日の会見で沖縄独自のロックダウンを行う意思があるか問われ「法律上の限界があると政府が発表している」と指摘。法的に不可能であると明言した。県は今後も、政府による緊急事態宣言の根拠となっている特措法の範囲内で、県民に協力を求める。
「感染を防ぐ方法ははっきりしている。すべての県民が、これまでの感染対策を改めて見直し、徹底すること」と力を込めた玉城知事。「過去とは比較にならない規模」(玉城知事)の第5波襲来に対し、県民一人ひとりの自己防衛が「頼みの綱」とされる局面に至った。