人口約1600人の日本最西端の島、与那国町で新型コロナウイルスの感染が急拡大している。新規感染者は13、14の2日間で20人に達した。町民には不安が広がり「恐くて外も歩けない」という声も上がる。町内では感染者を収容できる施設がなく、県は感染者の島外搬送を検討している。
祖納に住む70代男性は「こんな小さい島で20人も感染者が出たと防災無線で聞いて驚いた。恐くて外も歩けない。戦々恐々としている」と不安そうだった。14日からは2日間の日程で、台風で7月から延期されていたワクチン集団接種が始まったが、町民の1人は「接種が予定通り行われていれば」と悔しがる。
島には入院施設がなく、県や町は多数の感染者発生に苦慮している。八重山保健所は感染者の搬送について「調整中」としている。町は防災無線で感染対策の徹底を改めて訴えた。
今月は3日告示、8日投開票の町長選が行われており、選挙戦と感染拡大の関連性を指摘する町民もいる。町民によると、感染者の中には選対幹部を含む複数の選挙関係者もいるという。祖納の男性は「町長選のクラスター(感染者集団)ではないか」と疑う。
70代女性は「大変なことになってしまった。選挙の時にけっこう人が集まっていたので心配」と声を震わせた。
今回の感染の発端は観光客だったといういう見方もある。与那国町商工会の杉本和信会長は「島外から観光客などを入れる際の対策がきちんと確立されていないのが現状。多くの島民が感染し、自宅待機も多い。どこまで増えるかもわからない。商工会としても町に対し、PCR検査の義務付けなどができないものか提案していきたい」と話した。
町長選で初当選を決め、28日に新町長に就任する糸数健一氏は「この状況では、真っ先にコロナ対策に取り組む必要がある。町民の命を守ることが最優先だ」と強調。
来島者に対し、PCR検査陰性やワクチン2回接種の証明書提示を求める方針を示した。