「いのち」に思い馳せる 子育て・教育講演会で松崎氏

人が背負っている人生に想いを馳せ、命や志など目に見えないものの尊さを訴える松崎運之助氏=10日夜、市健康福祉センター

 石垣市学童保育連絡協議会(小底弘子会長)は10日夜、「子育て・教育講演会」を市健康福祉センターで開いた。東京都の夜間中学校で30年以上勤務してきた松崎運之助氏(73)が講師。松崎氏は「幸せになるための学童保育~命の光を大きく輝かせるために」をテーマに、自身の生い立ちや夜間中学校での体験を紹介し、人が背負っている人生に思いを馳せ、命や志など目に見えないものの尊さを、約80人の来場者に訴えた。

 1945年に旧満洲(中国東北部)で生まれた松崎氏は日本への引き上げ後、広島、長崎などを転々とし、母親、弟、妹の4人で敗戦後の苦境を生き抜いた。
 旧満洲からの引き上げの際には飢えと極寒で兄を亡くした。母親からたびたび、「お前の命の後ろには、無念で死んだ多くの命がある。自分さえよければいいなどと思うな」と聞かされていた。
 弟と妹を保育園まで迎えに行っていた小学3年生のころ、笑顔で接し、食べ物を分けてくれた保育士から、「頑張るのよ、あなたは偉い子よ」と励まされた。「この一言にどれだけ救われたか。こんな大人になりたいという目標を持てた」と振り返る。「頂いた優しい眼差しや励ましは、人生の中で必ず力や光になる。だから教育や福祉などは祈りみたいなもの。人の一生に寄り添っていく」と訴えた。
 働きながら定時制高校と明治大学二部を卒業。東京都で夜間中学校教師を33年間務める傍ら、「学童保育」が広く知られていなかった当時、住んでいた千葉県で学童保育の草分け的な活動を行なった。
 夜間中学校では老若男女、さまざまな背景をもつ生徒がおり、仮名から教えたことも。松崎氏は「できるかできないか、役に立つか立たないかなどのフィルターで〝人を見た〟つもりになってしまう。命に伴う感性や想像力、思いやり、志など、見えないところにあるものこそが、深く、尊い」と訴えた。
 松崎氏は松竹映画『学校』(山田洋次監督)の原作モデルで製作協力者でもある。

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