注目すべきは、離島が日本の領海や排他的経済水域の保全に極めて重要な役割を果たしていると明記したことだ。
尖閣諸島が無人島化したことで紛争の火種になった例を見れば分かるように、離島に人が住み続けること自体が日本の国益に大きく貢献している。離島振興は、政府が辺境の住民に救いの手を差しのべることが目的ではなく、日本という国を守るために必要な政策だ。
自民党の沖縄振興調査会が今月まとめた提言では「国境を担う沖縄において人々が安心して生活を営むことができる環境を作ることは、引き続き国の責務」と述べた。沖縄が日本の安全保障に寄与していることを明記し、沖縄振興特別措置の対象に尖閣諸島を含める検討も求めた。
沖縄振興に安全保障の観点を取り入れることは国際情勢の変化にも即応している。特に国境離島で生活する八重山住民からは多くの共感を得られるだろう。
沖縄は来年で復帰50年を迎える。本土住民の間からも、沖縄の地理的、歴史的事情には理解を示しながら、沖縄だけ特別扱いが続くことへの疑問の声が上がり始めている。
懸念すべきは、国にとめどなく振興策を要求する中で甘えの構造が定着し、県民の自立心が失われてしまうことだ。
米軍基地問題や離島振興のように、どれだけ時代が変わっても国による特段の援助が必要な分野は確かにある。
だが一方で、子どもの貧困、教育、産業振興などの課題は、本来、県民自らが与えられた環境の中で最善の努力を尽くし、その上で必要なら国の援助を求めるべき事柄だ。
来年度から新たな沖縄振興計画が始まるが、県民には「これが最後」という覚悟を持って課題に挑む姿勢が求められる。