【視点】変革への情熱が生んだ新町長

 竹富町民は、政治経験がない40代の元町職員に町政再生のかじ取りを託した。
 官製談合防止法違反や加重収賄で逮捕、起訴された西大舛高旬前町長の辞職に伴う町長選が18日開票され、前泊正人氏(44)が元町議那根操氏(70)を557票の大差で破り、初当選した。
 政治経験がない人物が町長になったことは過去にもあるが、前泊氏は44歳という異例の若さで、出馬前まで知名度はほとんどなかった。
 竹富町に限らず従来の選挙は、既成政党などに支持基盤を持つ候補者が組織力を生かして当選するケースがほとんどだった。
 しかし今回は、確たる地盤を持たない若者が短期間で急速に支持を広げ、ニューリーダーの座をつかみ取った。これまでの選挙の常識を覆したという意味では革命的な出来事だ。今町長選は、歴史的選挙になったと言っていいだろう。
 背景にあるのは、西大舛前町長の汚職事件である。町発注の海底送水管更新工事2件の入札で最低制限価格を業者側に漏らし、謝礼と知りながら計1700万円を受け取ったとして加重収賄罪などで起訴された。
 前町長は「決める政治」「即断即決」をスローガンに、国とのパイプを活用して町の振興を進め、剛腕として知られた。しかし、その裏で金権体質が存在していたことに多くの町民が失望し、既成政治への不信感を募らせた。
 前泊氏は透明性ある町政運営を訴え、徹底した情報開示を約束した。島々を回り、有権者に変革への情熱をぶつけた。前泊氏の人柄にひかれ、前町長の支持者も含め、多くの町民が磁石に引き付けられるように、次々と前泊氏のもとに集まった。
 これまでの八重山の選挙では見たことがない光景だ。政党政治の枠組みを超えた新たな政治スタイルが今後、八重山で定着するのかにも興味が沸く。
 前泊氏は町職員として十数年の行政経験があるが、役場でのポストは課長補佐が最後で、高度な決断を下す立場は初めての経験になる。西表島大原庁舎の見直しなどの課題が山積する中、失われた信頼を取り戻し、町の振興を前に進めることができるのか。責任は重大だ。
 町議会は対抗馬だった那根操氏も含め、今選挙で6対6に分断された。与党多数の議会になると見られるが、前泊氏自身が言うように「ノーサイド」の環境を実現できるかも問われる。
 前泊氏は高校野球の強豪校、沖縄水産でキャプテンを務め、甲子園にも出場したユニークな経歴を持つ。
 高校球児なら誰もが憧れる大舞台を経験するまでには、並大抵でない苦労があったはずだ。高校野球では、チームプレーの大切さを学んだという。そうした経験の一つひとつも含めて町民の幸せのため生かし、持てる力を最大限に発揮してもらいたい。

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