まいぞうくん

 連載開始からまもなく4カ月になろうとしているOKINAWA考古学。ここらで読者の皆様からのご質問に答えていきたい。多かったのが、この質問だ。
 「掲載されている写真は難破船の残骸や割れた陶磁器などがほとんどだが、割れていないものが見つかった例はないのか?」

写真1

「海底遺跡の調査の歴史は新しく、まだまだ分かっていないことが多い。海底の遺物についても、どのような状態で見つかったのか。他に遺物はないのか。散布しているとしたら、どのような状況なのかを把握する必要がある。このため、海流によってどこかに散逸してしまうようなことが想定される以外は、遺物を引き上げない」
 言い換えると、こうなろうか。
 「大事な現場を荒らさないで欲しい」
 そもそも、割れていない陶磁器が見つかったとしても、持ち帰ってオークションに出品して大もうけ…というのはハードルが高い。
 「そうした陶磁器は、数百年の歳月を経て、表面にサンゴやフジツボなどが付着している。それらを全部そぎ落とすのは、とても手間がかかる」(亀島主任)からだ。
 埋蔵文化財センターでは、回収した陶磁器は半年間水につけて塩抜きをする。そして彫刻刀などで慎重に削り取っていく。それでも取れない場合は希塩酸を使って洗浄し、付着物を取り除いていく。亀島主任のように、専門家として長年の訓練を受けてきた人にしか出来そうにない、非常に根気のいる作業なのだ。
 第一、塩酸をどこで入手するのか。入手したとしても、小さなお子さんのいる家庭では非常に危険が伴う作業なのは言うまでもない。そして、少しでも傷を付けてしまえば、その時点でオークションに出す価値はゼロになってしまうだろう。割に合わないのだ。

2月24日付け掲載の、石垣島南西の黒島沖で見つかった沖縄産陶器。このように、ほぼ欠けていない状態で見つかった例は他にもあるが、表面にはサンゴなどがびっしりと付着している(写真は沖縄県立埋蔵文化財センター提供)

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