石垣市が1月29、30の両日、尖閣諸島周辺で海洋調査を実施した。昨年に続く2回目の調査で、中山義隆市長、東海大の山田吉彦教授らが調査船に乗船した。
石垣市の調査は、尖閣諸島が日本の領土であり、石垣市の行政区域であることを内外に示す意義がある。
「なぜ今」という声があるかも知れないが、現在、尖閣周辺がどういう状況であるか改めて考えれば理由は明確だ。
中国海警局の艦船が常駐し、周辺で操業する日本漁船への威嚇を繰り返し、領海侵入も常態化している。この状況が尖閣国有化以降、もう10年も続いているのだ。
日本の実効支配を突き崩そうとする中国の前に、日本は防戦一方の状況だ。かといって、日本側が武力で中国艦船を排除しようとすれば、戦争へとエスカレートする恐れもある。そもそも日本国民は、他国に領土を侵略されるという事態に慣れていない。何が有効な反撃策なのかも分からないのが実情だろう。中国は「平和国家」日本の弱点に、とことんつけ込んでいると見るほかない。
こうした中、地元の自治体が「領土を守る」という強い意志を持って行動したことは、中国側の攻勢を、ある程度押し戻したことを意味する。中国側は海警局の艦船に調査船を追跡させ「日本の船を追い払った」と発表したが、そうした強がりは、焦りの表れでもある。
石垣市は尖閣周辺の水質調査やドローンによる空撮などを実施した。今後は周辺海域の漁場としての活用も進むだろう。空撮によって、魚釣島で生態系の破壊が進む実情も把握できた。上陸が事実上不可能な状況だが、国や自治体として何ができるか検討しなくてはならない。
尖閣諸島を守るための地元の取り組みは、本来、石垣市と沖縄県が連携して進めるべきものだ。だが今、残念ながら県には尖閣の地元であるという自覚も、行動する意思も感じられない。石垣市が孤軍奮闘している形になっている。
市民、県民、さらには本土住民が、もっと尖閣問題への関心を高めることが、市の決意をサポートすることになる。
林芳正外相は2日、中国の秦剛(しん・ごう)外相と電話会談した。この中で秦外相は尖閣問題に触れ「右翼勢力の挑発を抑止」するよう要求した。
尖閣周辺海域で操業する日本漁船や、調査船を出した石垣市を「右翼勢力」と決めつけ、日本政府に活動を抑え込むよう求めているものと見られる。傍若無人な内政干渉だ。
中国は自らの強大な経済力や軍事力に自信を強めており、日本という国を、そこまで軽く見るようになったとも言える。
それでも日本が尖閣諸島の実効支配を確保し続けていられるのは、自衛隊や海保など、国防や国境警備に従事する人々が、国民の見えないところで日夜奮闘しているからだ。
日本は少子高齢化で活力が減退し、物価高など経済的な苦境も深まり、最近では治安の悪化も懸念されている。戦後、日本人の繁栄の基盤となってきた社会そのものが崩壊に向かう危機さえ感じられるようになった。
そうした中で、少数の使命感を持つ人たちが、辛うじて国を支えているとも言える。私たちはもっと現実を直視しなければならない。