台湾有事を念頭にした政府の安全保障政策を批判する玉城デニー知事に対し、八重山の3市町長が不満を募らせている。玉城知事は沖縄の自衛隊強化に懸念を示し、南西地域を「第一線」と指摘した安保関連3文書の改定に対し「県民に大きな不安を感じさせる」と批判。一方、台湾に近い八重山では沖縄本島と比べ格段に有事への危機感が強く、エスカレートする知事の言動に、3市町長から「理解できない」という声が上がる。
玉城知事は今月の新年度所信表明演説で「基地負担の軽減は、米軍と自衛隊を併せて検討される必要がある」と言明。「自衛隊の急激な基地機能強化により、沖縄が攻撃目標になるリスクをさらに高める事態を生じさせてはならない」と、政府が進める自衛隊強化に反発した。
今月の記者会見では、「反撃能力を有するミサイルの県内配備は基地負担の増加につながり、県民の理解も得られない。断固反対する」と強調。反撃能力の保有そのものに関しても、憲法などとの整合性に課題があると訴えた。
玉城知事が政府の安全保障政策を批判するのは、支持基盤である「オール沖縄」勢力が事実上、共産党や社民党などの「革新共闘体制」であるためだ。
玉城知事は今月、県が都内で開いたシンポジウムでも同趣旨の発言をした。安全保障政策を巡っては県内でもさまざまな意見があるが、革新勢力を代弁する知事の発信が独り歩きし「沖縄の総意」として全国に拡散されている現状がある。
石垣島では陸上自衛隊駐屯地の建設が進んでおり、部隊は来月、運用開始される。中山義隆市長は「南西諸島の防衛体制は、奄美大島から与那国島まで自衛隊配備がつながっている中で完成する。それぞれの地域が受け入れ、配備がここまで進んでいる状況で、県が懸念を示すのは理解できない」と知事を批判した。
安全保障政策を巡る県と国の対立を「本当に困ったことだ」と話すのは、台湾から111㌔の距離にある与那国町の糸数健一町長。政府は島の防衛体制を強化するため、陸自駐屯地で新たにミサイル部隊配備を計画している。
糸数町長は政府に協力する構えだが、玉城知事はミサイル部隊配備に関する用地取得費に対し「唐突に予算計上され、厳しく臨まざるを得ない」と抵抗する姿勢だ。
糸数町長は「自衛隊に関連することは、なかなか県には要請しづらい面がある。知事本人と話が噛み合わない」とこぼした。
地理的には石垣市と与那国町の中間に位置する竹富町には、現在、防衛関連施設はない。ただ前泊正人町長も「県が離島の現状をどう考えているのか、疑問符がつくことばかりだ」と安全保障政策を巡る知事の言動に不信感を示す。「『防衛施設がないから我々は関係ない』ではなく、八重山はしっかり守っていくという考えで、3市町がタッグを組んで取り組む」と強調した。