【視点】改憲、沖縄から率先して発信を

 3日は76回目の憲法記念日となる。国会は憲法審査会で憲法の在り方を議論しているが、与野党で意見が割れた状況が続き、改憲に向けた具体的な動きは見えないままだ。
 改憲を巡って最大の関心事は、戦力の不保持を定めた憲法9条の扱いだ。沖縄では長く「9条の理念を生かし、軍隊や基地を撤去することが平和につながる」という固定観念が支配的だった。
 だが、それは誤りだ。隣国の中国が軍事大国として台頭する中、日本を威嚇する姿勢を強め、とりわけ沖縄は直接的な脅威にさらされている。非武装が安全を担保するという考えは幻想に過ぎない。
 昨年8月、中国が台湾を包囲した軍事演習で、日本のEEZ(排他的経済水域)を含む波照間島や与那国島の周辺海域に弾道ミサイルを撃ち込んだのは、象徴的な出来事となった。「9条の理念」にこだわることが、かえって県民を危険にさらすという現実が浮き彫りになったのだ。
 沖縄を守る軍事力の存在は必要だが、一方で沖縄には米軍基地の過重負担という現実がある。米軍絡みの事件、事故は戦後、一貫して県民を苦しめ続けている。抑止力の維持と米軍基地負担の軽減を両立するには、日本自身が防衛力を強化し「自分の国は自分で守る」という原則に立ち返るほかない。
 その意味で、憲法9条を改正し、米軍に代わり、沖縄における自衛隊の活動領域を拡大することが、沖縄の米軍基地負担を正面突破で軽減する道だと言える。
 自衛隊は米軍と異なり、日本の法律のもとに運用されている。自衛隊絡みのトラブルは、国内問題として解決できる。自衛隊は沖縄でも不発弾処理などで存在感を発揮しており、県民の自衛隊に対する信頼感も、日々高まっている。
 憲法に自衛隊を明記し、自衛隊が国内外で機動的に展開できるような法的整備を進めることが、沖縄の米軍基地問題を解決するためにも重要だ。県民が全国でも率先して憲法改正の必要性を訴えるような雰囲気を醸成したい。
 国民主権、平和主義、基本的人権の尊重は、憲法の3原則と呼ばれている。日本を民主主義国家たらしめている重要な規定であり、それを変えるべきでないのは当然だ。それらの規定を現実に合わせ、内容を豊かにし、より実効性あるものにしていくのが憲法改正の作業である。
 しかし国会での議論を見ていると、改憲と護憲を主張する勢力で水掛け論を繰り広げているように思えてしまう。特に野党の一部による護憲一点張りの主張は、現実の社会情勢を考えると何の説得力も持たない。憲法改正は最優先課題ではないと強調する勢力もあるが、それは「逃げ」であり、無責任な姿勢である。

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