【視点】国境の島 早急な防衛強化を

 防衛省が陸上自衛隊与那国駐屯地に地対空ミサイルを配備する計画の住民説明会を開いた。2023年度に駐屯地東側の約18㌶を取得し、訓練場、隊庁舎、火薬庫、覆道射場を設置する予定だ。
 与那国島は、中国の軍事的圧力にさらされる台湾とは約111㌔しか離れていない。台湾有事が発生した場合は、中国の攻撃対象となる恐れもある。にもかかわらず与那国駐屯地には沿岸監視部隊しかおらず、島を守る実戦部隊が配備されていない現状だ。
 政府が国境の島の防衛力を強化するのは当然である。町民の理解を得る努力を続けながら、できるだけ早期に地対空ミサイル部隊の配備を実現させてほしい。
 中国は台湾周辺での軍用機飛行や尖閣諸島周辺での領海侵入など、近隣諸国への威嚇的な行動を強めている。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で議長を務める岸田文雄首相は「力による一方的な現状変更を許さず、自由で開かれた国際秩序を守り抜くというメッセージを国際社会に発する機会にしたい」と述べた。
 これに対し中国外務省の報道官は「日本は隣国を中傷している」「軍国主義による自らの侵略の歴史を反省すべきだ」などと反論した。
 現在、国際社会が問題視しているのは、米国に迫る経済力と軍事力を手にしながら、それを悪用して地域の平和をかき乱す中国の行為である。中国外務省の言い分は話のすり替えでしかない。中国の厚顔無恥な態度を見る限り「話し合いで何とかなる」という楽観論は通用しないだろう。
 しかし与那国町へのミサイル配備を巡っては、中国の脅威に対し、どうやって住民の安全を守るかという問題よりも「ミサイルが配備されると島が標的になり、住民が危険にさらされる」といった反対論ばかりがクローズアップされている。
 台湾の東側にある国境の島という与那国島の位置を考えると、ミサイルが配備されていようがいまいが、中国が与那国島を攻撃対象と考える可能性は、十分に有り得る。反撃能力を持つミサイルの配備もそうだが「防衛力を強化すると標的にされる」という日本国内の論議を、中国は大笑いしながら見物していることだろう。この種の不毛な議論には早急に終止符を打ちたい。
 糸数健一町長は、北朝鮮のミサイル発射に備えた地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の島内への展開に理解を示し、地対空ミサイル部隊の配備も容認する姿勢を示している。住民の安心安全に直接的な責任を持つ首長として、現実的な対応だ。
 2月に石垣市で開かれた住民保護のシンポジウムに登壇した際も、糸数氏の発言からは、台湾有事の危機を真剣に受け止め、行動しようとする決意がうかがえた。
 一方で糸数氏に対しては、ミサイル配備に反対する勢力の反発も強まっている。今後、島内で政治的攻防が激化する可能性もあり、それだけに政府は、ミサイル部隊配備について丁寧な説明を継続する必要がある。

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