港湾作業員の待機、一時回避 PAC3撤収要求に回答待ち 「住民生活人質」批判も

自宅待機を見送ったことについて報道陣の取材に応じる全港湾執行委員=7日午前、浜崎町の石垣港ターミナル

 自衛隊が石垣市南ぬ浜町に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開していることを受け、全日本港湾労働組合沖縄地方本部(全港湾)が市内の港湾事業者3社の組合員約50人に指示していた自宅待機は7日、いったん回避された。全港湾の執行部が同日、那覇市で防衛省幹部と会い、南ぬ浜町周辺で勤務する港湾作業員の安全が確保できないとしてPAC3の撤収を要求。自衛隊の回答を待って今後の対応を決定するになった。港湾作業員が自宅待機に突入した場合、八重山の物流に影響が出る恐れがあり、市民からは全港湾に対する批判の声も上がっている。

 全港湾によると、港湾事業者側が自宅待機の回避に向け防衛省、自衛隊側と調整。7日午前8時ごろ、全港湾と防衛省の協議の場が設けられたと事業者側から連絡を受けた。これを受け、全港湾は自宅待機の実施をいったん見送った。
 同日午後、熊本県から来県した九州沖縄地方管轄の西部方面隊の幹部2人と、東京から来県した自衛隊幹部2人が那覇市内で全港湾の山口順市執行委員長らと協議。
 山口執行委員長はPAC3を南ぬ浜町から撤収させるよう求め、自衛隊、防衛省幹部らは「持ち帰り協議する」と回答。PAC3の展開は当面維持する意向を示したという。
 全港湾の執行部は那覇市での協議終了後、石垣市内で報道陣の取材に応じ、組合員の自宅待機を当面延期すると発表した。今後、自宅待機を指示するかどうかは自衛隊側の回答を得て決める。
 同本部八重山部会の波照間忠部会長は「港湾の近くにミサイルがあるので従業員が心配だ。国としての考えもあると思うが、配備について事前に市民や港湾関係者への説明がなかったことが問題だと認識している」と強調した。
 北朝鮮による衛星発射予告期限の11日が迫り、自衛隊からの回答が得られないまま、南ぬ浜町からPAC3が撤収する可能性を危ぐ。「うやむやにして『撤退しました』では、信頼関係に大きな傷を生む」と、防衛省、自衛隊に明確な対応を求めた。
 一方、自衛隊の活動に協力してきた八重山防衛協会の山森陽平事務局長は「批判されるべきはミサイルを発射している北朝鮮なのに(全港湾は)PAC3の撤収を求めるため住民生活を人質に取っている。漁業者やフェリーの事業者らも通常通り港湾を利用しており、港湾全体が危険であるかのような言い方は遺憾だ」と全港湾の対応を疑問視した。

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