【視点】中国の恫喝 毅然と対峙を

 東京電力福島第1原発の処理水放出に対し、中国が対抗措置として日本産農水産物の輸入禁止を打ち出すなど、日中間の緊張が高まっている。
 日本国内には中国からと見られる迷惑電話が相次ぎ、中国では日本大使館、日本人学校への投石すら行われるようになった。中国政府は反日感情を煽るだけで、有効な対策を打ち出そうともしない。中国の対日姿勢は恫喝(どうかつ)外交そのものであり、日本政府には毅然とした態度で対峙してほしい。
 中国政府は日本の処理水を「核汚染水」と呼び、処理水放出によって、日本が国際的な環境汚染を引き起こしているかのようなネガティブキャンペーンを展開している。
 中国自身がこれまで、国際的な環境保護にほとんど関心を示してこなかった経緯を考えると、中国の真の狙いは処理水放出を口実に、日本の国際的評価をおとしめることにありそうだ。日本に対して外交的優位に立とうという戦略だろう。科学的根拠に基づいた対話に応じようともしない態度が、その意図をうかがわせる。
 時を同じくして石垣市の尖閣諸島周辺には、中国政府の漁解禁を受け、百数十隻もの中国漁船が押し寄せている。
 警備に当たる海上保安庁によると、領海侵入などの違法操業は確認されていないようだが、海保の負担が増しているのは間違いない。こんな状況では日本漁船が尖閣周辺に出漁するのも難しい。
 尖閣周辺の接続水域に常駐している中国海警局の艦船も、相変わらず「パトロール」と称した航行を続けている。国境でも中国は公然と対日圧力を強めているのである。
 処理水といい、尖閣といい、中国の対日外交で際立つのは、ひたすら高圧的な態度で日本の譲歩を迫るやり方だ。米国と並び立つ超大国として、もはや日本との対立を恐れないという自信の表れなのだろうか。
 日本産農水産物の輸入禁止、国民に対する反日感情の煽り立て、さらに国境での威嚇行為は、時代が時代であれば戦争をも引き起こしかねない。常軌を逸した振る舞いである。中国の対日外交に正常な理性が働いているかどうかさえ疑わしい。
 中国としては国内の政権への不満をそらすため、外国を悪者に仕立て上げたいが、米国との正面衝突はためらわれる。そこで経済力も軍事力も自国より「弱い」日本をスケープゴートに選んだ側面もあるのではないか。
 日本としては、相手方の底意を見透かした上で、一つひとつ打つべき手を打っていく冷静さが必要だ。農水産物の輸入禁止に対する同等の報復措置も検討すべき時期である。
 沖縄は地理的に対中最前線にあるのだから、県民としても重大な関心を持ち、日中関係の行方を見極めたい。

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