【視点】法治国家の首長と言えるか

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、玉城デニー知事は4日、斎藤鉄夫国土交通相が同日までの期限で指示した設計変更申請の承認に応じない考えを示した。記者団に「現段階では承認とも不承認とも判断できない」と述べた。
 承認は最高裁判決に基づく法的義務だ。それを拒否して、法治国家の首長と言えるのだろうか。
 「判断できない」「期限までの承認は困難」と詭弁を弄してはいるが、この案件では、そもそも知事に政治的判断が求められているわけではない。知事が自分で国を提訴し、司法の判断を仰いだのである。知事は司法の判断に粛々と従わなくてはならない立場だ。
 判決が気に入らないから従わないと言うのなら、提訴に踏み切り、かつ敗訴したことに対する知事の政治的責任はどうなったのかと問いたい。
 要するに今回の承認拒否は、辺野古移設反対運動の象徴的存在である知事が「移設に反対するためなら、違法行為も辞さない」と意思表明したに等しい。「オール沖縄」勢力による移設反対運動の本質が、法や理性を踏み越えた「反基地イデオロギー」の発露にほかならないことを、自ら浮き彫りにしてしまった。
 知事に対しては、県議会の与党議員が一致して設計変更申請を承認しないよう求めるなど、政治的な圧力がかかっていたのも事実である。仮に承認に踏み切った場合、自らの支持者やメディアから厳しい批判を浴びるのは目に見えていた。
 知事は自らの法的義務より、支持基盤への配慮を優先させたと言われても仕方がない。「知事は板挟みになって苦しんでいる」という報道もあったが、実際は政治家として、最も安易な選択をしたのではないか。
 国は今後、知事に代わり設計変更を承認する「代執行」の手続きに入る。その時、知事は支持者やメディアと一緒になり、自らが犠牲者のような顔をして「国が承認を強行し、民意に反して移設工事を続けようとしている」と宣伝するつもりなのだろうか。
 法を無視しても辺野古移設に反対する姿勢を示したことで、移設反対運動の大義は大きく傷つけられた。知事の支持者が果たしてそのことに気づいているのか、疑わしい。
 知事はスイス・ジュネーブの国連人権理事会に出席し、辺野古移設問題は人権問題だと訴えた。だが人権は、民主主義や法治国家の理念が確立されて初めて保障されるものだ。
 法治国家の首長としてあるまじき知事の行動は、結局、基地反対のために人権の概念を都合良く利用しただけだった、と指摘される結果を招くだろう。
 知事がこのタイミングで国連人権理事会に出席したのも、最高裁での敗訴を見越し、手詰まりの状況を糊塗(こと)するためだったではという疑いもわく。
 知事の国連出席には1千万円以上の県費が投じられたことが、開会中の県議会で明らかになった。こういうことの繰り返しでは「オール沖縄」勢力に対する県民の不信感は増す一方だろう。

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