「15の別れ」から住民と再会喜ぶ 立木さん西表祖納で写真展 記念の1枚に思い

西表の人々のポートレートを収めたボードの前で、再会を喜ぶ立木義浩さん(右)と被写体になった住民=10月29日、祖納公民館

 女優をはじめ著名人の撮影で知られる写真家、立木義浩さん(86)が、八重山で暮らす人々、風土を写した写真展が10月28、29日の両日、西表島の祖納公民館で開かれた。29日には立木さんが訪れ、被写体となった住民たちとの再会を楽しみ、撮影からの「その後」の近況を聞いて交流を深めた。

 公民館の中央には、住民ら100人以上のモノクロ写真のポートレートなどが1枚に収められたボードが置かれ、訪れた住民が自分や家族、知人の写真を見つけては、「この子は今、石垣の高校で部活動に熱中していますよ」などと立木さんに報告。立木さんも「こうしてみなさんと再会して、写真を見ていただけるのはうれしいね」と、顔をほころばせた。
 立木さんは、西表島に滞在したときに、宿主から西表島には高校がないため、中学校を卒業すれば多くの生徒が親元を離れ、石垣島に行ってしまうことを知った。「それは、出ていく子供たちはうれしいかもしれないけど、親にとってはせつないね。じゃあ、『15の別れ』の前に、記念写真を撮ろうよ」と提案。今年1月、祖納公民館に簡易スタジオを用意して、住民らの撮影が実現した。モノクロにしたのは「カラー写真は時間が過ぎれば退色してしまう。モノクロのほうが長生き。モノクロを見て色を感じる人もいるというおもしろさもある」(立木さん)と考えたからという。写真は後日、被写体となった人たちに送られた。
 婦人会の集合写真の中に自分の姿を見つけた上亀智恵さんは「女優さんを大勢撮ってきた巨匠に自分が撮ってもらうことがあるなんて考えたこともなかった。撮影前は、服や髪など身だしなみを整えて、すごく緊張したことを思い出した。いただいた写真は、宝物として、仏壇の隣にしまってあります」と話していた。
 会場には、写真文化の継承を図る「日本再発見プロジェクト」(キャノンマーケティングジャパン主催)のため、立木さんが2022年6月からことし4月にかけて八重山諸島の各地で撮影したスナップ写真なども約40点展示された。
 立木さんは1965年に「カメラ毎日」に掲載された「舌出し天使」で注目されてから、主に女性写真の分野を中心に著名人の撮影で活躍してきた。トークショーでは、代表作がスライドで紹介され、自叙伝執筆中の山口百恵さんや、夏目雅子さん、エリザベス女王の写真もスクリーンに浮かびあがった。高倉健さんとの思い出話などに住民らは興味深く耳を傾けていた。
 八重山諸島で1年にわたって撮影した感想を問われた立木さんは「島の夕方は色っぽいね。島に抱かれている感覚になる」と、感性で応じた半面、「もう撮らなくてもいい、という感覚にはなっていない。島の深部まではまだ入れていない。島をちゃんと撮るには、家庭に入り込んで、もっと親密にならないとね」と、打ち明け、さらに旺盛な撮影意欲をのぞかせていた。

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