米軍横田基地所属のCVオスプレイが鹿児島県の屋久島沖で墜落し、搭乗員1人の死亡が確認された。残る搭乗員7人の安否が不明となっている。
まずは行方不明者の一刻も早い救出を祈りたい。その上で事故原因を早急に解明し、事故防止策が確立されれば円滑な飛行再開を目指してほしい。
オスプレイは陸上自衛隊も木更津駐屯地で2020年から導入しており、V22を14機保有している。10月には日米共同訓練の一環で新石垣空港にも飛来し、離島防衛で重要な役割を担うことが想定されている。
それだけに、国内で初となる死者を出した今回の事故は衝撃を広げており、政府は米軍に安全性が確認されるまでの飛行停止を要請。県や米軍基地が所在する関係自治体も同様にオスプレイを飛行させないよう求めた。人命が最優先であり、当然の措置だ。
一方で事故を機に、オスプレイは「欠陥機」であると主張していたずらに住民の恐怖をあおり、県内・国内からの全面撤去を求める声も出ている。しかし、現時点では事故原因が機体の構造的な要因によるものか、ヒューマンエラーなのかも判明していない。行き過ぎた批判は控え、ここは冷静にならなくてはならない。
オスプレイはヘリと同様に垂直離着陸が可能で、滑走路が短い場所でも運用でき、上空では固定翼機と同様に高速で長距離飛行ができる。現代技術の粋を集めた軍用機だ。
通常の航空機と違い、軍用機は過酷な訓練で使用されることもあるため、事故が多発する傾向がある。その点に着目し、特に沖縄では、基地反対派からオスプレイが「欠陥機」のレッテルを貼られて久しい。
だが、オスプレイ運用の可否は、反基地イデオロギーとは別に判断する必要がある。オスプレイを使うなと言うのなら、以前のような軍用ヘリに戻るのか。あるいは、あらゆる軍用機を沖縄の空から一掃するのか。
それが本来は望ましい未来なのかも知れないが、現在のように緊張した国際情勢で、一切の軍事力を否定することが果たして県民の安全につながるのか。反基地イデオロギーに動かされ、技術の進歩を否定することが日本や沖縄のメリットになるのか。答えは明らかだろう。
玉城デニー知事は11月30日、オスプレイの飛行について「捜索救助活動であったとしてもオスプレイを使用することについては、重大な疑念を持たざるを得ない」と全面停止を要求した。
捜索救助活動を行う機体も含めて次々と墜落する事態は考えにくく、オスプレイは欠陥機であるという前提ありきの過剰反応ではないか。しかも人命救助目的であっても飛行を認めないというのであれば、本末転倒であるとも言える。こうした感情的な反応が行政の長として適切なのか、疑問を感じる。
日本としては、沖縄周辺で軍事行動を活発化させる中国への対応は急務だ。日米が共同し、沖縄を拠点として東アジアの平和的な安定を図る世界戦略も存在する。長期的にオスプレイの飛行停止が続く状況は得策とは言えない。
事故原因の徹底究明と安全対策を大前提に、住宅地上空の飛行を可能な限り避けるなどの配慮を重ねながら、有事にはオスプレイも含め、迅速に展開できる体制を整備しておくことが望ましい。県民としては感情的な反応に流されるのではなく、ある程度の時間をかけて事態の推移を見守る心構えが必要だ。