【視点】少子化 島々も存続の危機に

 少子化に歯止めが掛からない。2023年1~11月の出生数は前年同期比5・3%の約69万人で、12月も同じペースだった場合、通年では70万人半ばとなり、過去最少となる可能性が高まった。
 少子化がこのまま進行すれば、最初に大きな打撃を受けるのは、もともと人口が減少傾向にある離島や過疎地域の自治体だ。
 八重山では、石垣市こそ人口が初めて5万人を突破するなど増加傾向にあるが、竹富町、与那国町は厳しい状況だ。
 石垣市にしても、2022年からは出生数が死亡数を下回る状況が始まっており、いずれ人口減少のフェーズに入ると予測されている。このままだと、八重山の島々が存続の危機にさらされることは目に見えている。
 少子化、そして人口減少は、日本の将来を背負うべき人材が失われるということだ。国、自治体、さらには民間も含め、日本の総力を挙げて少子化の進行を食い止めないと、文字通り日本は「もたない」のではないか。
 有識者で組織する「人口戦略会議」(議長・三村明夫前日本商工会議所会頭)は今月、少子化対策に向けた提言「人口ビジョン2100」を取りまとめ、岸田文雄首相に提出した。
 印象的なのは、2100年の人口を8000万人とする目標を掲げたことだ。8000万人というのは現在(1億2400万人)の3分の2の規模に過ぎないが、これでも出生率を現在より上げる必要があり、達成のハードルは高い。いずれにせよ、近未来において1億人台の人口を維持することは、もはや不可能との認識である。
 石垣市で言えば、現在の人口5万人から、人口3万人台のまちに逆戻りするということだ。経済規模の縮小に伴い、市民生活の利便性が大きく後退することは容易に予想できる。
 支払う税金は増えるのに、受けられる行政サービスは少なくなり、採算が取れなくなった店舗や事業者は次々と撤退していく。若者は職を失って出て行き、高齢者ばかりになった島は荒廃する。
 八重山が国境の島であることを考えると、日本の安全保障にも深刻な影響が出てくるだろう。いずれは日本全国の自治体で同じようなことが起きる。
 人口戦略会議の提言では、人口減少を8000万人までで食い止める「定常化」と、現在より小さい人口規模でも、多様性に富んだ成長力のある社会を構築する「強靭化」の二つの戦略が必要だと指摘した。
 教育費の軽減や無償化の拡大などといった取り組みは前者であり、イノベーションの推進などは後者に属する。いずれも現代日本が世界に比べ立ち遅れているとされる分野だが、一つひとつ、できることから進めていかないといけない。
 日本の国力衰退は、数字の上でも明確になりつつある。日本のGDP(国内総生産)は、現在の傾向が続けば、そう遠くない将来に上位10位以内からも姿を消す。日本はアジアの片隅で忘れられた貧しい島国になってしまうかもしれない。現在の世代の飽食と怠慢のツケを、子や孫の世代が払うということである。そんなことでいいのか。国民的議論が必要だ。
 戦後日本の経済成長を支えたのが、第一次ベビーブームで生まれた「団塊の世代」であることはよく知られている。
 「団塊の世代」の子どもたちが第二次ベビーブームの世代であり、現在50代前半、沖縄で言うと1972年に生まれた「復帰っ子」とその前後の世代である。
 就職氷河期との遭遇など、さまざまな事情があったにせよ、この世代の国民が「第3次ベビーブーム」の火付け役となれなかったことが、現在の少子化傾向へとつながっていく。その意味では、子や孫の世代に対し、直接的に大きな責任を持つ「当事者」こそ、この世代だろう。
 「団塊の世代」が築いた遺産を守り、日本を反転攻勢の軌道に乗せるために、沖縄では「復帰っ子」世代の自覚と奮起が求められるところだ。

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