5市町、空港強化を直訴 玉城知事、沖縄振興への影響懸念

玉城知事に要請書を渡す中山市長ら5市町の関係者=29日午後、県庁

 国が有事を見据えて計画している空港の機能強化に県が慎重姿勢を示している問題で、石垣市の中山義隆市長ら離島5市町の関係者が29日、那覇市の県市町村自治会館で玉城デニー知事に会い、空港機能強化に向けた取り組みを2024年度予算に盛り込むよう直訴した。県側は、国が沖縄振興予算の枠内で空港の機能強化を進めた場合、他の振興予算にしわ寄せが来る可能性を懸念。玉城知事は「どのような形での予算計上になるのか方向性を確認し、絶対に沖縄振興に影響させないという確約まで取り付けていきたい」と述べた。

 県に提出された要請書は石垣市、竹富町、与那国町、宮古島市、久米島町の連名。滑走路延長、エプロン拡充など、空港施設の機能強化に向けた調査費の早急な予算措置を求めた。「観光客の受け入れ態勢拡充や経済振興の観点のみならず、災害時や国民保護も含めた万全の態勢を構築するため」としている。
 国は県内の主要空港・港湾を「特定重要拠点」と位置付け、国主導で機能強化に取り組みたい意向だが、主要空港の管理者である県の同意が得られていない。
 玉城知事は28日、来県した林芳正官房長官に対し、特定重要拠点の指定について「現在のところ十分な情報がなく、引き続き調整させてほしい」と回答。現時点で同意しない考えを改めて示した。
 中山市長らの要請に対し、池田竹州副知事は「(空港機能強化の整備予算は)政府から沖縄振興予算に計上するという説明があったが、振興予算全体の影響には明確な答えはなかった。仮に整備すると数十億円から百億円が必要になるが(沖縄振興予算の)2700億円にどのような影響を与えるかは、検討中ということだった」と説明。
 空港が特定重要拠点に指定されれば、有事の際、ジュネーブ条約による保護を受けられなくなるとの疑問の声が県議会から出ているとも指摘した。玉城知事は、費用対効果も課題だとした。
 県が空港機能強化と沖縄振興予算との関係を問題視していることについて、中山市長は「沖縄振興予算を元の3000億円に戻すため、予算を新たに取りに行くという思いで国と交渉してほしい」と要望。沖縄を取り巻く厳しい国際情勢や今月発生した能登半島地震を挙げ「(空港の機能強化は)一日の猶予もない。24年度予算で調査費がつくよう手を挙げてほしい」と語気を強めた。
 特定重要拠点に指定されれば有事の際、攻撃対象になるという意見に関しては「自衛隊が空港を優先利用するものではない。滑走路延長が自衛隊の利用につながるという論調で、この話(特定重要拠点の指定)を止めるのはやめていただきたい。空港、港湾を整備することで地域が活性化する。万一の災害の際も活用できる」とくぎを刺した。
 要請後の取材に対し「空港、港湾は災害時には離島の生命線になる。県には、そのことをよく考えてほしい。引き続き説得したい」と話した。
 要請行動には中山市長、竹富町の前泊正人町長、久米島町の桃原秀雄町長が参加。与那国町、宮古島市は代理を派遣した。
 県は当初、要請には池田副知事が対応するとしていたが、この日は急きょ、玉城知事自身が出席した。

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