住民生活「人質」の暴走 本島のみ回避に不信感も 全港湾スト

 全港湾沖縄地方本部が米艦船寄港に抗議し、石垣港で全面ストに突入した。通告によると11日から石垣港を離れる13日まで、港湾の荷役作業がストップし、八重山の物流に大きな影響が出る恐れがある。
 全港湾は「組合員の安全確保のため」としているが、米艦船が武器を搭載しているにせよ、寄港によって、直ちに港湾労働者に危険が及ぶ可能性は考えにくい。
 全港湾が主張する寄港のリスクと、物流停止によって住民がこうむるであろう被害との釣り合いが取れているとは到底言えない。「住民生活を人質に取った暴走」との批判は免れないだろう。
 離島の離島である八重山では生活物資の多くを海上輸送に頼っている。ストによって、本土や本島からの荷物の遅配などが起こる可能性は高い。食料品や医薬品といった生活必需品は備蓄があるが、ストの影響で不測の事態が起こらないとは断言できない。
 台湾有事の懸念が高まる中、台湾に近い八重山に米艦船が寄港するのは、中国に日米同盟の存在感を示す意義があり、紛争を未然に防ぐ抑止力になる。
 玉城デニー県政は米側に寄港自粛を要請したが、八重山の自治体から同様の声は上がらなかった。八重山を取り巻く厳しい国際環境を背景に、一定程度、寄港の意義が理解されているためだ。
 一方、寄港の賛否にかかわらず、すべての住民を一律にストの巻き添えにする全港湾の手法には「寄港に反対するため、なぜストが必要なのか」という説得力が感じられない。
 全港湾は当初、沖縄本島の港湾でも全面ストに突入する構えを見せていたが、沖縄港運協会、那覇港管理組合と協議し、本島でのストは回避することを決めた。
 予定通りストが実施されれば、県全域で物流が停止する恐れがあった。米艦船寄港に対する懸念を関係機関で共有する「落としどころ」で解決を図ったと見られる。ただ、石垣港の港湾管理者である石垣市は、市が交渉相手となるのは筋違いだとして話し合いに難色を示している。
 今回のストでは、離島のみにしわ寄せが行く。八重山で、台風以外の原因で物流が停滞するのは異例の事態。中山義隆市長は11日、取材に対し「物流が止まると住民生活に多大な影響が出る。そこは何とか検討していただきたい」と全港湾にストの再考を求めた。
 この日、全港湾と協議した那覇港管理組合のトップが玉城知事であることを指摘。「県は離島のストも含めて回避を働き掛けなくてはならない。那覇だけストを回避できればいいのか」と県の対応にも不信感をにじませた。(仲新城誠)

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