政府は29日、有事の際に住民が避難するシェルターに関する基本方針を公表した。これを受け、石垣市の中山義隆市長は市役所で記者会見し、シェルター整備に向け「調整を加速させたい」と表明した。整備場所は市役所の隣接地で建設する防災公園の地下駐車場など3カ所を検討している。最後まで島に残る公務員や、インフラを守るエッセンシャルワーカーなど、有事に避難が遅れる可能性がある人たちの収容を想定する。
防災公園の地下駐車場は災害時も含めた避難場所となるが、平時はイベントスペースとしても活用できる施設となる。防災公園の面積は約3㌶で、2024年度で設計に着手し、26年度の完成を目指す。
老朽化した消防本部庁舎の建て替え、市街地の西部エリアをカバーする消防西出張所の建設の際も、消防職員らが避難できる地下施設の併設を検討する。
政府は基本方針で、シェルター整備の際、財政支援の対象となる地域として石垣市など先島諸島の5市町を明示した。具体的な補助の内容は現時点で公表していないが、市は今後、防災公園などを財政的に有利な条件で建設できる可能性が高い。
中山市長は記者会見で「有事が起こると全市民を島外に避難させるが、島なので避難には時間がかかる。間に合わない場合に島内で避難する施設が必要」と強調した。
また「有事が起こらないよう、国はあらゆる手段を使って対応すべき」とした上で「シェルター整備は『戦争準備』という論調で反対する人がいるが、万一の時に最低限、命を守る施設なので、ご理解いただきたい」とも述べた。
市は今後、政府が示したシェルター整備の基本方針や技術ガイドラインを踏まえ、財源確保など必要な手続きを進める。防災公園の地下駐車場の規模や、有事の際、最後まで島に残ると想定される人数に関しても今後検討する。
石垣市は台湾に近く、中国が台湾に侵攻する台湾有事に対する懸念が強い。中山市長は今月6日、木原稔防衛相に財政支援を要請するなど、政府に対し、シェルター整備を積極的に働きかけてきた。