尖閣諸島の海洋調査を行うため、石垣市がチャーターした調査船が25日、石垣港から出発した。3回目の調査となり、前回2023年1月の調査時には確認できなかった魚釣島の北側をドローンで空撮。夜間には赤外線センサーで野生化したヤギの生息状況を確認する。調査を通じ、尖閣諸島が日本固有の領土で、石垣市の行政区域であることを内外に広くアピールする。
中山義隆市長、東海大学の山田吉彦教授のほか市議、メディア関係者も乗船。26日夜、石垣港に帰港したあと乗員を入れ替え、再び出航する。中山市長や山田氏は引き続き乗船する。
今回の調査ではドローンを魚釣島北側の上空で飛行させる。前回の南側調査と合わせて、魚釣島全域の空撮や一連の調査が完了すると見られる。市は今回の調査結果を踏まえ、国に上陸調査を求める意向。
中山市長は乗船前に報道陣の取材に応じ、視察のため石垣市を訪問中の玉城デニー知事について「尖閣は県の行政区域でもある。上陸要請のサポートをお願いしたい」と力を込めた。
山田氏は「島の本格的な調査に向けて、一つのめどをつける海洋調査にしたい。上陸調査の必要性を科学的に明確に伝えられる成果を残したい」と述べた。
魚釣島では、民間団体が持ち込んだヤギが野生化し繁殖。島南側の斜面では野草の食害が深刻で、2回目の調査では山肌の露出が確認できた。
ヤギの食害などで、環境悪化が進めば、固有種のセンカクモグラやセンカクツツジ、センカクサワガニなどの生息数が減少し絶滅する可能性もある。
尖閣諸島では他の先島諸島と同様に北側に大量の漂着ごみが流れ着き、環境が悪化。海流などの影響で、ごみが周辺海域で滞留しているとの指摘もあり、市は関連調査を行う。
今回の調査では、周辺海域で漁獲や戦時遭難者の海上慰霊も行う予定。調査時期は、海峡や気象条件などを考慮し北側でドローンが飛行できる4月を選んだ。2回目と同じ民間サルベージ船を利用している。
尖閣諸島周辺海域では、一方的に領有権を主張する中国海警局の艦船が常駐しており、調査船は海上保安庁の巡視船に護衛される。市議会の野党連絡協議会は23日の記者会見で、調査について「他国との緊張を高めるもので、タイミングや時期を考えて慎重にやるべきだ」と反対した。