会社設立に「重大な瑕疵」 前知事の公約優先、拙速に推進 調査検証委が報告

 米国ワシントン駐在事務所が株式会社として地方自治法などに反して運営されていた問題で、県が設置した調査検証委員会(委員長・竹下勇夫弁護士)がまとめた報告書が28日、明らかになった。この中では「株式会社の設立手続きには複数の重大な瑕疵(かし)が存在」すると指摘。問題点を解消する「瑕疵の治癒」も「事実上困難な状況」と結論づけた。米国に駐在職員を配置するという故・翁長雄志前知事の公約実現が絶対視された結果、日米の法律の調査を怠ったまま、会社設立が「拙速に進められたとの印象を拭えない」と批判した。
 駐在事務所は2015年5月「ワシントンDCオフィス社」として設立された。報告書では「知事決裁事項」としたが、実際には知事決裁の手続きは取られていない。
 県と同社の間で駐在職員の身分に関する事前の取り決めや、駐在職員の会社役員就任に関する庁内の決裁手続きもなかった。
 報告書によると、翁長前知事は駐在職員の報告を受け、駐在事務所の業務のために株式会社の設立が必要であることを認識していた可能性が高い。県が意図的に決裁手続きを取らなかった可能性も否定できず、会社設立の意思決定手続きには「より重大な瑕疵があることになる」と厳しい見方を示した。
 県が委託業者と締結した契約書には、会社設立は含まれない。委託業者が再委託した米国法律事務所の弁護士が会社設立の発起人となったが、弁護士が県の代理権を持っていたか「現時点では不明」と疑問視。会社設立手続きについて「現時点ではその正当性を担保することはできない」とした。
 委託業者が法律事務所に業務を再委託したことも、弁護士でない者が弁護士のサービスを提供する「非弁行為」として、ワシントンで禁止されている可能性を否定できない、とした。
 ほかに①駐在職員のビザ申請に明らかに事実と異なる記載がある②会社の株主総会の議事録すら存在せず、会社法のガバナンスとコンプライアンスに問題がある③地方自治法違反、地方公務員法違反の状態に対する昨年12月の県の追認も、この段階で法的効果を論じる意義は見出し難い―と問題点を列挙。
 その上で「瑕疵が連鎖する形でその後の運営も含めて違法となる可能性は否定できない」と危ぐした。

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