沖縄県立八重山病院跡地に建設される同病院の職員宿舎を巡り、新たな懸案が浮上している。職員宿舎の余剰地には民間医療施設のかりゆし病院が移転する方向で調整が進んでいるが、県側が職員の住環境に配慮し、日当たりが良く道路に面した敷地南側に職員宿舎を配置する方針を示しているためだ。石垣市議会(我喜屋隆次議長)の議員団6人は14日、県側に対し「患者を優先してほしい」と、南側にかりゆし病院を配置するよう要請。県側は難色を示し、両者の意識のずれが浮き彫りになった。
市議会は3月定例会で職員宿舎の位置に関する意見書を可決。職員宿舎が南側(道路側)に建設された場合、民間医療施設は北側にある既存の自衛隊員宿舎と挟まれるため①交通の便が悪くなる②遠くから見えにくく不便をきたす③周辺が混雑する―と懸念、民間医療施設に南側の土地を提供するよう求めた。
県庁で市議団の要請を受けた県病院事業局の宮城和一郎統括監は「八重山病院職員からは極力、住環境に配慮し、日当たりのいい場所を要望するという意見があった」と説明。
県立病院職員は沖縄本島から遠隔地への異動があるため、看護師などの人材確保に苦慮しているとして「宮古、八重山、北部で務める魅力を高めたい」と宿舎を南側に配置する必要性を訴えた。
市議団からは「職員の住環境のために患者を犠牲にしていいのか。患者を優先するのが県職員のあるべき姿ではないか」(友寄永三氏)、「バス停も道路も南側にある。足が悪い患者だと少し歩くのも大変だ」(仲間均氏)、「職員がずっとそこに住むなら考えないといけないが、異動がある」(我喜屋議長)と疑問の声が相次いだ。
職員宿舎とかりゆし病院の配置を逆にした場合、建設スケジュールに遅れが出る可能性を問われた宮城統括監は「八重山病院の職員を納得させる調整が必要だ」と発言。友寄氏が「八重山病院で働く人だからこそ、納得してくれるのではないか」と指摘する場面もあった。
県側は、かりゆし病院も北側配置に同意していると強調。病院事業局の比嘉学経営課長は「八重山全体の医療提供を考えると、今の配置で進めさせていただく」と理解を求めた。
市議団は、仲間氏が「離島軽視ではないか。(県側の言い分は)理屈にしか聞こえない」と反発するなど、最後まで県の説明に納得しなかった。
このあと、市議団は県議会にも要請し、上原章副議長は「委員会でも議論を進めたい」と応じた。
県は2022年に職員宿舎建設の基本構想を策定し、作業を進めてきた。
県によると病院跡地は2万4000平方㍍。職員宿舎を高層階にしてエレベーターを設置するとメンテ費用が掛かるため、最大4階建てを想定している。このため職員宿舎が南側にあると「病院が道路側から見えなくなる可能性がある」と危ぐする声も出ている。