【視点】関税交渉 右往左往の日本

 日本政府がトランプ関税で右往左往している。赤沢亮正経済再生担当相は4日、対米交渉のため米国に出発した。訪米は実に10回目を数える。

 7月の8回目訪米の際、いったんは交渉をまとめ上げたとして、SNSに「任務完了」と書き込んだのは何だったのか。「交渉の達人」を自任し、世界を翻弄するトランプ米大統領と渡り合う難しさはあるにせよ、日本は手玉に取られているというほかない。日本人として情けなさを感じてしまう。

 日本政府の説明によると、7月の日米合意では日本への相互関税、自動車関税がともに15%に設定されるはずだった。
 しかし8月7日に適用された新たな関税率では、当初の説明と異なり、従来の税率に一律に15%が上乗せされた。自動車関連には既存の関税率2・5%に加え、25%の追加関税が課されたままで、関税率は計27・5%となっている。

 石破茂首相は、関税率に関する日米の認識に「齟齬(そご)はない」として大統領令の修正を要求。米側も大統領令に関する事務処理のミスだとした。
 しかし新たな関税率の発動から2カ月経過した現在も、大統領令は修正されていない。

 財務省が発表した4~6月期の法人企業統計によると、製造業の経常利益は前年同期比11・5%減で、中でも車などの輸送用機器はトランプ関税の影響で29・7%減と大幅に落ち込んだ。
 自動車関税の15%への引き下げが実行されず、赤沢氏は「会社によっては1日に10億円、あるいは20億円の損失を出しているということだ」と危機感を示した。

 日本政府が日米の認識に齟齬はないと強調し、米側も事務処理のミスを認めているにもかかわらず、なぜ大統領令の修正にこれほど時間がかかるのか。

 関税交渉で、日本は米国に5500億ドル(約80兆円)の投資を約束させられたが、トランプ氏は利益の9割を米国が受け取ると主張している。
 今回の赤沢氏の訪米では、対米投資に関して明文化した共同文書の発表が検討されているという。大統領令の修正も共同文書の作成とセットにされている可能性がある。

 日本政府は当初、米国との間で文書は作成せず、口約束した対米投資に関しても曖昧にする戦略だったようだが、米国にうまく立ち回られたということだろう。
 対米交渉の迷走は、そのまま石破外交の迷走にほかならない。

 中国は3日、天安門広場周辺で抗日戦争勝利80年を記念する軍事パレードを実施し、新型ミサイルなどの兵器を誇示。習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が観覧席でそろい踏みした。

 日本周辺で、軍事力をてこに国際秩序を改変しようとする勢力が相互に連携しながら急速に台頭している。石破政権は明確な外交方針のもと、対日包囲網のような動きに対抗していかなくてはならない。
 だが現状はどうか。日本が安全保障の基軸と位置付ける対米関係すら、ぐらついている状況だ。今の日本は外交の羅針盤を失い、中露朝からも米国からも足元を見られている状態ではないか。

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