河野太郎外相が、日ロ平和条約締結交渉に関する記者の質問に対し「次の質問どうぞ」と繰り返し無視したことが波紋を広げている。外相は15日、自身のホームページで「おわびして改める」と陳謝した◆最近の若い政治家はメディアの活用がうまく、河野氏のケースは腑に落ちない。むしろメディアを個人的なパフォーマンスや、アリバイづくりに活用する政治家が増え、社内から「取材する必要などないのでは」という声が出ることも少なくない◆しかしインターネットの発達で、必ずしも既存メディアに頼らずとも情報発信できる時代が到来。「取材する必要はない」という記者の判断が、一般の読者には傲慢に映り「報道しない自由」という言葉が市民権を得るまでになった◆一般的に何を記事にするかは記者にゆだねられているが、判断を誤ると読者の厳しい批判にさらされる。時代の変化を敏感に察しないと、メディアと読者の距離は離れていくばかりだ。近年は特に、読者のニーズに対応することが難しいと感じる◆メディア対応を誤った外相は陳謝に追い込まれたが、常に読者の存在を意識しなくてはならないのは、当然、取材される側だけではない。取材する方、される方の双方にとって一層厳しい時代であることを自覚したい。