【視点】新元号が運ぶ新たな風

 2019年度のスタートは、新元号「令和」の発表から始まった。沖縄でも新元号に対し、県民のさまざまな反応があった。玉城デニー知事は「令和」の世が沖縄にとってどのような時代になることを期待するかを記者団に問われ「戦争のない平和な時代を望む」と述べた。5月1日に皇太子殿下が御即位され、新元号が使用されることになる。伝統を大切にしながら、新たな未来を切り開く気概を新元号から読み取りたい。
 「令和」のポイントはいくつか挙げられそうだ。まず、初めて中国古典ではなく国書(日本の古典)を出典にしたこと。日本最古の歌集である「万葉集」から語句を採用したことで、古来、日本人が育んできた精神や文化を大切にする気持ちを表した。
 その中でも「令」という文字は、初めて元号に採用された。昭和の「昭」や平成の「成」もそうだったが、新たなチャレンジだ。意外性は大きかった。命令や号令という言葉をイメージさせるため、国民の反応が分かれる文字かも知れない。京都産業大学名誉教授の所功氏によると「よい、よろこばしい」という意味を持つという。
 一方「和」の文字は、現在、社会の中核を担う昭和世代にとって懐かしく、なじみ深い文字だ。聖徳太子の「十七条憲法」で知られる「和をもって尊しとなす」という言葉に代表されるように、平和を愛する日本人の民族性を象徴する文字とされてきた。
 革新性と保守性を兼ね備えた新元号と言える。安倍晋三首相は記者会見で「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」と説明。「万葉集」は「天皇や皇族、貴族だけでなく、防人(さきもり)や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書」とした。
 元号に込めた思いについて「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、『令和』に決定した」と述べた。
 新元号が運んでくる新たな風に期待を膨らませながら、残り少ない「平成」との別れも惜しみたい。「戦争がない平和な時代だった」と言われる一方、多くの国民が大災害に巻き込まれた。沖縄にとっては、本土との経済的格差を順調に縮小させ、繁栄への礎を築きつつある時代だったが、米軍基地問題では苦悩する日々が続き、その出口はいまだに見えない。
 新たな御代は、さらなる平和と繁栄をともに達成する時代でありたい。

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