【視点】「辺野古」に翻弄される沖縄

 政治経験のない元新聞記者が、知名度も実績も、はるかに上回るベテラン政治家を破り、初当選を果たす。他の地域ではなかなか考えにくい選挙だが、沖縄ではそれが現実のものになった。衆院3区補選は、元沖縄タイムス社会部長でフリージャーナリストの屋良朝博氏が、元沖縄担当相の島尻安伊子氏を下した。
 屋良氏勝利のテコになったのは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題だ。事前の世論調査では、重視する政策に辺野古移設問題を挙げた有権者が最多の4割に達し「医療・福祉・介護」の約20%を大きく上回った。昨年9月の知事選、今年2月の県民投票に続き、辺野古移設に対する県民の強い反感が浮き彫りになった。
 しかし逆に言えば、今選挙もまた「辺野古」だけが争点化されてしまい、沖縄が抱えるさまざまな課題の論戦が不完全燃焼に終わった。沖縄の政治は常に「辺野古」に翻弄され続け、いまだ未来が見えない状況と言える。
 辺野古移設に対する誤解が、県民の間ではびこり続けている現状は残念だ。それは普天間飛行場を既存の米軍基地であるキャンプ・シュワブに縮小統合する負担軽減策であり、移設が完了すれば普天間飛行場の返還が現実になる。だが「県内移設では負担軽減にならない」という基地反対派の主張だけが独り歩きしてしまっている。
 日米両政府が普天間飛行場の県内移設で合意したのは、近年、沖縄周辺で中国や北朝鮮の軍事力増強が続き、抑止力として基地の重要性が増している現実があるからだ。平和や豊かさは、ただでは維持できない。
 米軍基地の整理縮小は必要だが、可能な負担軽減策を一歩ずつ前へ進めていくことしかできない。政治家が問われるのは常に結果だ。その意味で、普天間飛行場の即時撤去や辺野古移設反対を旗印にして当選した政治家たちが、どこまで現実に基地負担軽減の結果を出してきたのか、改めて問い直すことも必要だろう。

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