石垣島への陸上自衛隊配備問題を取り上げたNHKの番組「あさイチ」の内容に視聴者の誤解を招く箇所があるとして、中山義隆市長が抗議し、石垣市議会も17日に訂正を求める抗議決議を可決する見通しになった。NHKは事実誤認を認めていないが、陸自配備計画を巡って賛否両派の対立が続く中、市と市議会が報道機関への抗議で足並みをそろえる異例の事態に発展しそうだ。
問題になったのは8月26日に放送された同番組。反対派が陸自配備による水源の汚染を懸念していることを紹介し、駐屯地建設予定地から約1・6㌔離れた於茂登の水源の川の映像を「配備予定地周辺地は水源地」というテロップとともに流した。「石垣島の水道水の8割をまかなっています」というナレーションも流した。
地元農家が駐屯地について「何で皆が嫌うところにつくるのか」とコメントする場面が続いた。
この放送内容に中山市長は、八重山日報の取材に「於茂登の川は名蔵ダムの水源で、水道水ではなく農業用水だから話が違う。それに予定地から1・6㌔離れていることを『予定地周辺』と言っていいのか」と指摘。
中山市長は8月29日、東京出張の際にイベント会場でNHKのチーフディレクターに会い、直接抗議するとともに訂正を要求した。
NHKは同30日、ファックスで「複数の研究者に取材を行った上で、この川も含めて周辺一帯は、水源地(『於茂登山系』と呼ばれる)となっており、この水源地が島の水道水の8割をまかなっていることを伝えました」などと回答した。
中山市長は「あさイチは好きでよく見ている番組だが、石垣島の報道に関しては偏りがあった。言葉やテロップの使い方、映像の重ね方で誤った情報を視聴者に伝えた」と主張した。
番組の波紋は市議会にも及び、13日の議会運営委員会では、与党の長山家康氏がNHKに対する抗議決議案を提出。
この中では「視聴者に大きな誤解を与えるもので、到底看過できるものではなくNHKの報道姿勢には強い憤りを覚える」「『公共放送』を自認するNHKであればこそ、偏らず事実に基づいた公正・公平・中立な立場での報道が求められる」と番組を批判し、原因の検証やホームページでの訂正などを求めた。
与党の賛成多数で本会議への上程が決まり、17日の最終本会議で可決の公算となっている。