入島料、ごみ問題などに活用 開始2カ月、協力呼び掛け 竹富島

㊨入島料で維持・管理されるごみ箱。右は一般財団法人竹富島地域自然資産財団の属氏㊧対面での入島料支払いの様子=3日、竹富島港待合所

 竹富島の環境を保全しようと、9月1日から入島料の徴収がスタートして約2カ月が経過した。徴収業務に当たる一般財団法人竹富島地域自然資産財団職員の属(さっか)慎也氏に、島の現状と課題をインタビューした。

 ―入島料を徴収した理由は。
 「入島料の話は何十年も前からあった。人口369人の竹富島に年間約50万人の観光客が来ると言われている。観光事業で経済が成り立つ一方、オーバーツーリズムの現状もある」
 ―オーバーツーリズムの具体的な問題は。
 「まずごみ問題。年間50万人の観光客が出すごみの処理能力はない。ごみ拾いをして持ち帰る観光客もいるが、ペットボトルをポイ捨てする人もいる。入島料で得た資金の一部は、ごみ処理費用に使われる。観光客が原因で起きている問題なら観光客に解決してもらうという考えだ」
 ―入島料の活用方法は。
 「ごみ問題を世論に訴える意味を込め、9月1日から竹富港にごみ箱が設置された。維持・管理費を入島料でまかなう」
 「竹富島には豊かな自然と人間が共生してきた歴史がある。環境省が制定した地域自然遺産法で『二次的自然』とされるものだ。例えば畑作業の休憩場としてデイゴの木を植え、住民が休んだ木陰や、自分の畑の場所を示す『あじら』という石垣がある。これらが地域自然遺産法の二次的自然に該当し、入島料の活用による保護の対象になる」
 ―「二次的自然」が破壊される背景とは。
 「戦後、人々にお金がなかった時代に、畑だった土地が島外の業者に売られてしまった。土地を買収した業者は竹富島に思い入れはなく、農地は荒れ放題になった。外来種の植物が広がり、固有種は育たなくなってしまった。入島料で得た資金の3分の1は、戦後、島外の業者に売られた土地の買い戻しに使う予定だ。昔の復活を目指したい」
 ―その他のオーバーツーリズムの影響は。
 「伝統継承にも大きな影響が出ている。例えば道の掃除。これは島の伝統的な習慣でお清めの意味があるが、良くも悪くも観光業に人手が取られ、こういった伝統を守るのにも一苦労だ。観光業があるおかげで経済が成り立つが、一方で農業の担い手が観光業に取られ、島には土地も人手も足りない状況がある」
 ―今後の課題は。
 「当初の計画では入島料の収納率は7割を見込んでいたが、現状は1割しかなく厳しい。竹富町は今月1日から7日まで、期間限定で観光客に対し、入島料支払いへの協力を対面で呼び掛けた。もっと多くの観光客に入島料の趣旨を知ってほしい。竹富島を観光したあと『昔の風景が竹富島の魅力だ』と言って入島料を払ってくれる観光客も多い。入島料は募金のイメージがあるが、協力金。島民も負担している」
 (渡部節子)

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