19歳で宮古島から沖縄本島に出てきた古波蔵和夫さん(80)を待っていたのは、厳しい離島差別だった。アパートを借りようとすると「宮古の人ですか。遠慮してもらいます」。どこに行っても間借りを断られた◆現在、沖縄宮古郷友連合会の顧問を務める古波蔵さん。宮古出身の女性が本島の男性と結婚した際、長男が生まれるまで籍を入れてもらえなかったというエピソードも明かした。「今は『宮古の人は働き者』と言われ、差別されることはない。それでも『差別はまだある』と感じることがある」と話す◆70代以上の人からは、身をもって体験した差別を、今も生々しく聞くことができる◆最近では、メディア関係者の間で「離島の政治家は知事選の候補者になれるか」が話題になり、本島出身者が「本島の政治家が認めないでしょう」と、こともなげに語った姿を思い出す。差別の歴史をさかのぼれば、琉球王国が宮古、八重山だけに課した過酷な人頭税へと行きつく。根は深い◆沖縄の言論人は、米軍基地問題に絡め「本土による沖縄への構造的差別」を繰り返し糾弾している。しかし本島による離島差別の歴史に関しては、真摯な反省をほとんど聞かない。都合のいい時だけ持ち出される「差別」が、全国に対して説得力を持つわけがない。