八重山諸島の各地で方言大会が開催されるなど、次世代へ方言継承の機運が高まる中、国立国語研究所(東京都)の山田真寛准教授、中川奈津子助教ら言語学者らが、地域住民と協力して八重山や奄美などの島ことば絵本を出版する。
絵本は竹富島の「星砂の話」、与那国島の「ディラブディ」、多良間島の「カンナマルクールクの神」と、沖永良部島(鹿児島県)の「ましゅいっしゅーぬくれー」の4作品。親子で島の言葉を楽しく学んでほしいと企画した。
絵本は作成段階から多くの島民が関わり、またクラウドファンディングで1千部出版に必要な諸経費を募り、302人が協力、416万円の支援金が集まった。絵はイラストレーター・デザイナーの山本史さんが手がけた。
このうち「星砂の話」は、竹富島の星砂にまつわる民話を島民の内盛スミさん(故人)から3年かけて聞き取り完成させた。
昨夏にはこの絵本を使ったイベントが開催され、息子の内盛正聖公民館長と親族の内盛右希さんが朗読した。思いが詰まった絵本が三世代をつなぎ、親世代の意識も変えつつある。
山田准教授は「自分の島のことばを守ることは、日本の中や人間全体の言語の多様性を守ること」と強調。「一人ひとりの行動が大切。毎日ひとことでも発してほしい」と関心を持ち実践することを呼び掛けた。
絵本は各地域の言葉のほか共通語・英語表記、解説、朗読音声データが付く。絵本は今夏ごろ出版を目指し、それぞれの島の各施設、団体などにも寄贈する予定。
(隅田賢通信員)