東京などの大都市圏や沖縄本島で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中「時間の問題」と言われていた八重山での感染者確認が現実のものになった。県は13日、石垣市の20代の飲食業男性と60代女性がPCR検査で陽性だったと発表した。
2人とも感染経路は特定されておらず、県は市中感染の可能性を指摘している。その場合、発症していない水面下の感染者が相当数いる可能性も覚悟する必要があり、今後とも八重山で感染が拡大する恐れは大きい。
2人の発症日は今月4日と7日であり、逆算すると感染した時期は3月中旬以降になる。当時は、まさに島が「コロナ疎開」といわれる観光客でにぎわっていたころだった。
県は今回の2人の感染を、ウイルスが島外から持ち込まれたことによる「移入例」と見る。「コロナ疎開」の観光客が感染源である蓋然性は高い。不安を訴える市民の声に押される形で、中山義隆市長は3月末、体調不良者の来島自粛を呼び掛けたが、市民の悪い予感は的中していたようだ。
何度も繰り返されていることではあるが、八重山住民にとって最大の不安は、島々の医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さだ。
医師一人の小規模離島は言うに及ばない。感染症指定医療機関の県立八重山病院は、感染症対応病床を3床から9床に増やす方針を固めたが、感染が拡大すれば、瞬く間に埋まってしまうだろう。民間の協力医療機関で対応するにしても、やはり大人数を収容するのは不可能だ。