石垣市の尖閣諸島周辺海域を航行する中国公船「海警」の航行日数と延べ隻数が、今年1月から4月まで過去最多のペースで推移していることが海上保安庁のまとめで分かった。「海警」は尖閣周辺にほぼ常駐する態勢を構築し、警備に当たる海保の巡視船と対峙している。今年に入り、世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化しているが、中国が東シナ海や南シナ海で勢力拡張を図る動きには影響しておらず、日本は引き続き困難な対応を迫られそうだ。
海保によると「海警」は1~4月に尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で111日(前年同期比37日増)航行し、延べ航行隻数は381隻(同95隻増)に達した。いずれも過去最多だった2019年のペースを上回る。領海侵入は7日(同5日減)で延べ28隻(同20隻減)となり、ややペースが落ちた。
「海警」による尖閣周辺での航行は、自国の「領海パトロール」を名目に実施。中国が一方的に主張する領有権を国際社会にアピールし、尖閣侵奪の既成事実化を図る狙いがある。
尖閣周辺で出漁を続けている石垣市議の仲間均氏は「海警は以前から、しけの日以外は尖閣周辺で航行を続けている。航行日数が増えたということは、中国の姿勢が変わったわけではなく、単にしけが続いていないからだろう」と推測。「中国は本気で島を取りに来ている。日本は毅然とした姿勢を取らないといけないが、戦争にしないためには、日中のトップで話をつけるほかないのでは」と話した。
一方、領海侵入のペースが鈍化している背景には、習近平国家主席の国賓訪日を控え、中国が一定程度の対日配慮を示している可能性がある。ただ領海侵入を中断させる様子は見られず、日中関係の改善と領有権の主張は別とする基本姿勢は変わらないと見られる。
2019年は「海警」の接続水域での航行が282日、延べ1097隻だった。領海侵入は32日で延べ126隻となり、前年を日数で13日、延べ隻数で56隻上回っていた。
今年4月には中国海軍も、空母「遼寧」などを沖縄本島と宮古島間で初めて往復させ、日本や台湾に存在感を誇示。中国はフィリピンやベトナムなどと領有権を争う南シナ海の島々でも一方的に行政区の設置を宣言し「コロナ禍」の中、国際社会の隙を突くような動きが目立っている。
日本側は尖閣諸島を行政区とする石垣市や宮古島市で陸上自衛隊の配備を進め、海洋進出を強める中国の脅威に備えている。