「ゆでガエル」にならぬよう 今週の突っ込み処③
- 2020/6/6
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連載3回目にして早くも再登場だ。小欄の常連になる予感がする。年末に「年間大賞」でもやったらぶっちぎりでチャンピオンになるかもしれない。
玉城デニー知事がツイッターで「中国が沖縄県を侵略している事実はありません」と発信した(後に削除)。
投稿者から「中国が沖縄県を侵略し、県民の生命財産を脅かしていることはどう思われますか」と問われ、そう答えた。
ご丁寧に「侵略とは国家が他国の主権、領土保全もしくは政治的独立に対してなす武力行使、または国連憲章と両立しない他の武力行使である」と解説も披露している。
侵略の定義はその通りだろう。問題なのはそれに至る前段に対する認識の甘さだ。
侵略はある日突然降って湧いたように起きるものではない。国家間の主張の対立。経済摩擦。現場部隊のつばぜり合い。そうした過程がエスカレートし、最終的に武力行使に打って出る。侵略はゼロか100かではない。
知事の発言は「100でない以上、危惧する必要はない」と述べたと受け止められても仕方がない。
おめでたい。100に向かって緊張状態の濃度が増す前段で危機感を持ち、対抗し、備えなければならない。
中国船はことし、過去最多ペースで尖閣諸島沖の領海、接続水域への侵入を重ねている。連続航行は50日を超す。5月には与那国島の漁船が中国船に追い回される事件が起きた。
尖閣沖をわがもの顔で往来する中国。一方の日本は漁船も近づけない。外形的に見る限り、どっちが実効支配に近いかは明らかだ。実効支配をひとたび許せば手の打ちようがなくなることは竹島の例を見たら一目瞭然だろう。
サラミを1枚1枚薄く切っていくように相手が警戒しないよう徐々に前進する。「サラミスライス戦術」は中国の十八番だ。一歩ずつ拡張を重ね、相手が気づいた時は「もう手遅れ」に持っていく。
「ゆでガエル」の話は知事もご存じだろう。
カエルは熱湯に入れるとびっくりして飛び出す。ところが、水に入れて徐々に温度を上げると変化に慣れて出ようとせず、気づいた時はゆで上がっている。
知事がゆでガエルになっても一向に構わないが、その時には多くの県民が犠牲になっている可能性があることを肝に命じるべきだ。
(猫)